過失割合を逆転させた事例~丁字路交差点で右折車の右側からバイクが追い抜こうとした際の交通事故~

2024年5月18日

こんにちは、優誠法律事務所です。

今回は、過失割合が唯一の争点であった事案について、交通事故紛争処理センターでこちらに有利な内容で解決できた事案をご紹介いたします。

典型的な交通事故の類型における過失割合の基準をまとめている「別冊判例タイムズ38号」の基準にしっかりと当てはまらない事案について、交渉段階での相手方の主張をひっくり返すことができました。

紛争処理センターでの斡旋は、過失割合でお互いの主張がかけ離れている場合の解決方法の1つになりますので、ぜひ参考にしていただければと思います。

事案の概要

本件の事故発生状況は、言葉で説明すれば「依頼者Aさんの運転する四輪車が丁字路交差点を突き当り路へ右折進行しようとしたところ、Aさんの後方を進行していた相手方Bさんの運転するバイクが、Aさん車両を右側から追い越そうとしたために接触したもの」となります。

文字だとわかりづらいので、以下で図示します。

事故状況図

双方がもともと進行していた道路は、交差点内を中央線が貫いており、優先道路という扱いを受けます。

Aさんは、上記丁字路をウインカーを出して右折しようとしました。

そうしたところ、Aさんの後方から進行していたBさん運転のバイクが、右折しようとしているAさんの右側から追い越しをしようとして反対車線にはみ出して進行し、Aさん運転車両の右側に接触して本件事故が発生しました。

幸い双方ともお怪我はなく、物損のみの事案でした。

証拠としてはAさん運転車両に設置されていたドライブレコーダーの映像がありました。

また、Aさんの自動車保険の弁護士費用特約が利用可能でした。

交渉経過

本件では双方の修理額については争いがなく、争点は過失割合のみでした。

過失割合での争いとなると、通常は「別冊判例タイムズ38号」の基準に基づいて交渉を行います。

(判例タイムズを用いた基本過失割合などの考え方については、以前の記事で説明していますから、そちらもご覧ください。「過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その1~」)

しかし、自動車対バイクの案件で、判例タイムズの基準で今回の案件にしっかりと当てはまるものはありません

近いものとしては、自動車対自動車についての135図から137図があります。

いずれも自動車対自動車で、交差点において先行自動車が右折しようとしたところ後方からの追い越しをかけた自動車が接触したというケースについてのものです。

判例タイムズ135図
判例タイムズ135図
基本過失割合 90(Ⓐ):10(Ⓑ)

135図が最も基本的な過失割合で、後行車9:先行車1となるものですが、この図は追い越し禁止の交差点での事故についてのものであり、中央線が交差点内を貫いていて優先道路である本件ではそのまま適用するのは困難です。

そうすると、適用可能性があるのは、優先道路交差点での追い越しに適用される136図(後行車5:先行車5)先行車が右折前にあらかじめ道路中央に寄らなかった場合に適用される137図(後行車2:先行車8)となります。

判例タイムズ136図
判例タイムズ136図
基本過失割合 50(Ⓐ):50(Ⓑ)
判例タイムズ137図
判例タイムズ137図
基本過失割合 20(Ⓐ):80(Ⓑ)

また、判例タイムズのこれらの図は、自動車対自動車について記載したものです。

Bさんが自動車ではなくバイクである本件では、5%から10%程度バイク側であるBさんに有利に修正される可能性(このようにバイクに有利な修正を「単車修正」と言ったりします。)もありました。

このようなAさん側に不利ともいえる状況から、Bさん側は強気であり、さらにBさん側に有利な裁判例も提示して、Aさん9:Bさん1の過失割合を提示してきました。

これに対しては、こちらからも、こちらに有利な判断をしている裁判例で本件に引用できるものを提出し、Aさん1:Bさん9の過失割合を主張しました。

このように、本件はお互いが1:9の過失割合を主張し、妥協点を探ることが困難な状況でした。

紛争処理センターへの申立てを選択

以上の状況から、次の手続きに進む必要があったのですが、本件では紛争処理センターへの申立てを選択しました。

選択肢としては訴訟(裁判)もあり得るところで、事実関係自体に争いがあったり、過失割合以外にも争点が複数あったりするケースでは訴訟を選択することもあります。

ですが、本件ではドライブレコーダーの映像が存在し事実関係そのものにはほとんど争いがなく、その事実をいかに評価して過失割合に落とし込むかというところで折り合いがつかないというケースでした。

また、訴訟に比べて紛争処理センターでの手続きは早期の解決が見込まれます。

以上の事情から、本件では紛争処理センターへの申立てを選択しました。

他方で、紛争処理センターは訴訟と違って事実認定のための証拠調べ手続きが充実しているわけではありませんので、事実関係そのものに争いがあるような案件では訴訟を選択することが多いです。

紛争処理センターでの主張

紛争処理センターでは、Bさん側からは、進行道路が優先道路であることやAさんが右折時に右側に寄っていないという判例タイムズの基準に沿った主張がなされました。

これに対して当方は、判例タイムズの基準に沿うとこちらの過失割合が大きくなってしまいます。

そのため、あえて判例タイムズの基準からは離れて、確かに優先道路ではあるものの、右折を開始した後にセンターラインを越えてまで右側から追い越しをかけてくるバイクがいると想定することは困難であること、Aさん車両が右折時に右側に寄っていないといっても本件道路は両車線合わせて幅員5メートルもなく、片側幅員は2メートル半もないことから、右折前に右側に寄ることには限界があることなどを主張しました。

また、単車修正については、以下のように主張しました。

そもそも四輪車に対してバイクの過失割合が有利に修正されるのは、バイクの方が運転者が露出している等から怪我を負うおそれが大きく、その意味で四輪車に対する「交通弱者」と言えるためです。

しかし、本件ではBさんは怪我をしておらず、双方物的損害のみ生じています。

したがって、どちらかが弱者という関係にありません。

そのため、いわゆる単車修正については、本件には適用されるべきではありません。

あっせん案の内容

以上のような主張の応酬の後、紛争処理センターからは、Bさんの追い越し行為は極めて危険な行為であること、Aさんには右折時に右側に寄っていないなど右折にあたっての不適切な点は認められないとの見解が示され、さん2:Bさん8という過失割合でのあっせん案が提示されました。そして、最終的にその内容での示談が成立しました。

任意交渉時のBさん側の主張をひっくり返すことができ、Aさんにもとても喜んでいただけ、紛争処理センターへの申立てを行った甲斐のある解決となりました。

まとめ

今回は、判例タイムズの基準にしっかりと当てはまらない事案について、紛争処理センターを利用することによってこちらの有利に解決できた事例についてご説明しました。

判例タイムズの基準がない、あるいはその基準を適用させたくないような場合は、交渉では限界があり、訴訟や紛争処理センターを選択することが多いです。

ドライブレコーダーがあるなど、事実関係そのものに争いがなければ紛争処理センターで過失割合の話をすることも可能であり、訴訟に比べれば早期の解決が見込まれます。

本件は、そのような理由から紛争処理センターを利用し、結果として過失割合を逆転させることができ、Aさんにも喜んでいただくことができました。

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投稿者プロフィール

弁護士栗田道匡の写真
 栗田道匡 弁護士

2011年12月に弁護士登録後、都内大手法律事務所に勤務し、横浜支店長等を経て優誠法律事務所参画。
交通事故は予期できるものではなく、全く突然のものです。
突然トラブルに巻き込まれた方のお力になれるように、少しでもお役に立てるような記事を発信していきたいと思います。
■経歴
2008年3月 上智大学法学部卒業
2010年3月 上智大学法科大学院修了
2011年12月 弁護士登録、都内大手事務所勤務
2021年10月 優誠法律事務所に参画
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (共著、出版社:日本実業出版社)