過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その4~
皆様、こんにちは!
優誠法律事務所です。
今回のテーマは過失割合です。
以前ご紹介した駐車場内の交通事故の過失割合の記事に対する反響が多かったので、今回も別の駐車場内の交通事故の過失割合が問題になった事例をご紹介します。
やはり、駐車場内の交通事故は典型的な類型ばかりではなく、過失割合で争いになることも多いですから、お困りの方も多いということだと思います。
まず、駐車場内の交通事故をご紹介した最初の記事で
●過失割合とは?
●基本過失割合とは?
●弁護士にご依頼いただいた場合の過失割合の争い方
などについてご説明していますので、そちら(過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その1~)も是非ご覧ください。
今回の事例は、駐車スペースへ入ろうとした車両と駐車スペースから出てきた車両が通路上で衝突した事故です。
今回ご紹介するIさんの事故も、駐車場内で比較的よく発生するパターンの事故のようにも思いますが、駐車スペースが角だったことや、加害者が駐車していたスペースとの位置関係などに特徴がありました。
そして、この事故も、個別的事情を基に交渉・裁判をした結果、当初の加害者側保険会社の主張とは大きく異なる結論になりました。
皆様のご参考になればと思い、ご紹介させていただきます。
今回の依頼者~駐車場内で車VS車の交通事故~
今回の依頼者Iさんは、福岡県在住で
・交通事故はコンビニの駐車場内
・相手方に過失割合3:7を主張されている
・幸い交通事故による怪我はなし
・弁護士特約が使用可能
という内容でした。
【本件の争点】過失割合
上が本件の交通事故の現場となった駐車場です(事故当時の写真ではありませんので、実際の当事者双方の車両は写っていません。)。
今回の交通事故の当時は、コンビニの建物と平行に並んでいる駐車スペースの一番コンビニ寄りのスペース(⑤)が空いていました。
今回の相手方(加害者)となった車は、コンビニの建物の前に並んでいるスペースの一番左(⑥)に駐車していました。
Iさんは、このコンビニで買い物をするために立ち寄り、右側の入口から入ったところ、ちょうど正面に見えた⑤の駐車スペースが空いていたので、そこに停めようとして、駐車場の中央のスペースで切り返して、バックで駐車を始めました。
ちょうどIさんが⑥のスペースの後ろを通りかかった時、⑥のスペースに駐車していた相手方は、コンビニでの買い物を終えて、バックで通路に出て来ました。
相手方は、(確認したと主張していましたが)後方を確認せず、シフトレバーを「R」に入れてすぐに発進したようで、バックランプが付くと同時くらいに通路に出て来た様子がIさんの車両のドライブレコーダーに映っていました。
Iさんは、サイドミラーで相手方の車が動いたことに気が付き、慌てて一旦停止しましたが、相手方がIさんの車に気が付いていない様子だったので、前方に少し回避しました。
ところが、相手方はそれでもIさんの車両に気が付かず、バックを続けました。
しかも、コンビニの正面の出口から出るために、右にハンドルを切りながらバックしたため、回避したIさんの車両を追いかけるような形になってしまい、Iさんの車両に衝突しました。
相手方は、ミラーでしっかり後方を確認したと主張していましたが、衝突するまでIさんの車両に気が付かなかったと述べていて、後方を確認していなかったことは明らかでした。
幸いこの交通事故では双方にお怪我はありませんでしたので、双方の自動車の修理費の賠償のみが問題になりました。
相手方の保険会社は、当初、この事故の過失割合として30(Iさん):70(相手方)を主張していましたが、Iさんとしては、相手方がバックで出てくることに気が付いて一旦停止して衝突を回避しようとしたのに、相手方が後方を確認せずに急にバックしてきたことで衝突されており、ご自身に過失があるということ自体納得されていませんでした。
しかも、相手方保険会社の担当者に、「角の駐車スペースでの交通事故のため、どちらかに優先権がある訳ではない」、「本来は過失割合50:50が妥当」、「30:70まで譲歩している」などと言われ、大変憤慨されて、私たちにご相談されました。
幸いIさんの自動車保険には弁護士特約が付いていましたので、弁護士費用のご負担なく弁護士に依頼できる状態でした。
基本過失割合は?
まず、今回の交通事故の基本過失割合を考えます。
(「基本過失割合とは?」については、以前の記事で説明していますので、こちらもご覧ください。)
相手方保険会社は、今回の事故は、駐車場の通路を走行している車両と駐車スペースから出てきた車両の事故であると主張し、別冊判例タイムズの335図によって、基本過失割合は30:70になると主張していました。
しかし、既にご説明したように、Iさんは通路を走行中に衝突された訳ではありません。
以前の記事でご説明したように、別冊判例タイムズに掲載されている車同士の駐車場内の交通事故類型は3つしかなく(3類型については以前の記事「過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その2~」でご説明していますので、そちらもご覧ください。)、3類型に当てはまらないものも多いため、個別に状況を検討する必要がありますが、保険会社は無理やりでも3類型のどれかに当てはめて主張しようとする傾向があるように思います。
今回の保険会社の担当者も、無理やり通路進行車と駐車区画退出車の事故類型である別冊判例タイムズ335図に当てはめて主張してきたようでした。
しかし、今回の事故では、Iさんが通路を走ってきて衝突した訳ではなく、駐車スペースに入れるためにバックしていた訳ですし、相手方が駐車スペースから出てきたことに気が付いて一旦停止し、前方に回避しようとした状態で衝突されています。
そのため、私たちは、335図とは状況が全く違うと指摘して、今回の事故は別冊判例タイムズの類型ではないと主張しました。
また、Iさんは相手方がバックしてくることに気が付いて前方に回避したにもかかわらず、相手方が後方を確認しないでバックを続けたことで衝突したことから、Iさんには衝突を回避することができなかったことを根拠に過失は0:100と主張しました。
実際、別冊判例タイムズにも、通路走行車が駐車区画退出車の通路への進入を認識して十分な車間距離を空けてあらかじめ停止していたのに駐車区画退出車が運転を誤って通路進行車に衝突した場合などは、335図には該当しないという趣旨の説明が記載されています。
裁判の結果~過失割合15:85で解決~
過失割合30:70を主張していた保険会社に対して、私たちは、Iさんが一旦停止して前方に回避までしたのに、相手方が後方を全く確認せずにバックして事故が起きた点などを理由に、今回の交通事故は別冊判例タイムズ335図で検討するべきではないと主張しましたので、交渉材料として同種の交通事故の裁判例(0:100と判断されたもの)も見つけて交渉を始めました。
しかし、相手方本人は、後方をしっかり確認していたと主張し続け、Iさんが一旦停止したことや前方に回避したことを否定し、双方ともバックしていたときの事故だと主張しました。その上、相手方保険会社の担当者も、相手方の車両に付いたキズから、Iさんもバックしていたはずだと同調してきました。
そこで、Iさんの車両のドライブレコーダーの映像から、明らかにIさんが一旦停止して前方に回避していること、Iさんがバックしていたときにぶつかったという主張は間違いであることを指摘しました。
そうしたところ、相手方は、別冊判例タイムズ335図から10%修正した20:80であれば示談すると回答してきましたが、Iさんとしては10:90までしか譲歩したくないというお考えでしたので、交渉決裂となり、裁判を起こすことになりました。
裁判でも交渉時と同様の主張をした結果、裁判官もこちらの主張を理解したものの、Iさんが前方に回避した位置が十分な距離を空けたとまでは評価できない(もう少し離れれば衝突を回避できたかもしれない)と判断し、過失割合15:85での和解案を示しました。
そして、Iさんも裁判官の判断で、そのような理由ならご自身の過失についても納得できると了承されましたので、裁判上の和解が成立しました。
まとめ
今回のIさんの場合、結果的に30:70から15:85と過失割合を修正することができました。
今回の相手方保険会社担当者は、当初は別冊判例タイムズの335図の類型を基に考えていましたし、相手方車両のキズからIさんもバックしている状況で衝突したなどと自信満々で間違った分析をした報告書まで作成していました。
そんな中、裁判所の和解案でようやく15:85まで過失割合を修正できました。
やはり、このような事案は弁護士の手が必要です。
今回も、交通事故自体は軽微な事故で修理費も高額にはなりませんでしたから、弁護士費用特約が使えなければ、弁護士にご依頼いただくことで費用倒れになっていたかもしれません。
Iさんも弁護士費用特約が使えたことで、弁護士費用のご負担なく私たちにご依頼いただくことができました。
弁護士費用特約は、契約中の自動車以外の自動車での交通事故や、自転車や歩行中の交通事故でも使えるものが多いですし、契約者のご家族が交通事故に遭った場合も使えるものが多いです。また、自動車保険だけでなく、火災保険などにも付いている場合があります。
交通事故でお困りの際には、ご家族の保険などでも使える弁護士費用特約がないか確認してみてください。
私たちの優誠法律事務所では交通事故のご相談は無料です。
私たちにお手伝いできることがあれば、お気軽にご相談ください。全国各地からご相談いただいております!
また、他の過失割合を修正できた交通事故事例もご紹介しておりますので、よろしければそちらもご覧ください。
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投稿者プロフィール
法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本(出版社:日本実業出版社)