過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その3~

2024年4月1日

皆様、こんにちは!

優誠法律事務所です。

今回のテーマは過失割合です。

以前投稿した駐車場内の交通事故に対する反響が多かったので、今回も駐車場内での交通事故の過失割合が問題になった事例をご紹介します。

●過失割合とは?

●基本過失割合とは?

●弁護士にご依頼いただいた場合の過失割合の争い方

などについては、過失割合をテーマにした最初の記事(過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その1~)でご説明していますので、そちらも是非ご覧ください。

今回の事例は、駐車スペースへ入ろうとした車両と駐車場の通路上の車両が衝突した事故です。

以前の記事でもご説明したように、駐車場内での事故は必ずしも典型的なものばかりではありませんので、個別に検討する必要があります。

今回ご紹介するDさんの事故も、通路進行車と駐車スペース進入車の事故という点では、駐車場内で比較的よく発生するパターンの事故のようにも思いますが、この事故の個別的事情を基に交渉した結果、基本過失割合と大きく異なる結論になりました。交渉だけで加害者・被害者が逆になる程に過失割合が変わることは珍しいので、皆様のご参考になればと思い、ご紹介させていただきます。

今回の依頼者~駐車場内で車VS車の交通事故~

今回の依頼者Dさんは、東京都在住で

・交通事故はコンビニの駐車場内

・相手方に過失割合 80(Dさん):20(相手方) を主張されている

・幸い交通事故による怪我はなし

・弁護士特約が使用可能

という内容でした。

【本件の争点】過失割合

事故現場の駐車場の写真

上が本件の交通事故の現場となった駐車場です(事故当時の写真ではありませんので、実際の当事者双方の車両は写っていません。)。

事故発生状況の図

今回の交通事故の当時は、コンビニの建物の横に並んでいる駐車スペースの1つ(⑦)が空いていました。今回の相手方(加害者)となった車は、この⑦のスペースにバックして停めようとしました。

Dさんは、車を①の駐車スペースに停めてコンビニで買い物をしていましたが、買い物を終えて、右下の出入口から道路に出ようとして通路を移動していました。

Dさんは、相手方の車が通路の前を走っていたので、相手方の後ろをついて行き、相手方が出入口の手前で止まったため、Dさんもその後ろで一旦停止しました。

Dさんとしては、相手方も同じ出入口から道路に出ようとしていると思っていたので、道路手前で止まったのは、道路を走ってくる車がいたためだと思っていました。

ところが、相手方は道路に出ようとした訳ではなく、停められる駐車スペースを探していて、次の瞬間、⑦の駐車スペースに入るためにバックを始めたのです。

このとき、相手方は後方をよく確認しておらず、Dさんの車が後ろにいることに気が付いていませんでした。

しかも、相手方はバックする際にハザードを出しておらず、Dさんは、相手方のバックランプが付いたことに気が付いて、慌ててクラクションを鳴らしましたが、間に合わず、衝突されてしまいました。

幸いこの交通事故では双方にお怪我はありませんでしたので、双方の自動車の修理費の賠償のみが問題になりました。

相手方の保険会社は、当初、この事故の過失割合として80(Dさん):20(相手方)を主張していましたが、Dさんとしてはご自身が止まっている状態で、相手方が後方を確認せずに急にバックしてきたことが今回の事故の原因なので、ご自身に過失があるということ自体納得されておらず、ましてご自身の過失の方が大きいとされたことに憤慨されて、私たちにご相談にいらっしゃいました。

幸いDさんの自動車保険には弁護士特約が付いていましたので、弁護士費用のご負担なく弁護士に依頼できる状態でした。

基本過失割合は?

まず、今回の交通事故の基本過失割合を考えます。

(「基本過失割合とは?」については、以前の記事で説明していますので、こちらもご覧ください。)

相手方保険会社は、今回の事故は、駐車場の通路を走行している車両と駐車スペースに入ろうとした車両の事故であると主張し、別冊判例タイムズの336図によって、基本過失割合は80:20になると主張していました。

判例タイムズ336図
判例タイムズ336図
基本過失割合80(A):20(B)

しかし、既にご説明したように、Dさんは通路を走っていた訳ではなく、一旦停止していた状態でした。以前の記事でご説明したように、別冊判例タイムズに載っている駐車場内の交通事故の類型が少なく(掲載されている3類型については以前の記事でご説明していますので、こちらもご覧ください。)、今回の保険会社の担当者も深く考えずに通路進行車と駐車スペース進入車の事故類型である336図で主張してきたようでした。

しかし、今回の事故では、Dさんが走ってきて衝突した訳ではなく、停止していたDさんに相手方の方から衝突していることに加え、相手方が後方を確認せず、ハザードも出さずにバックし始めていて、Dさんとしては相手方のバックランプが点灯するまでバックしてくることを予測できなかったことなど336図とは状況が全く違うと指摘して、今回の事故は別冊判例タイムズの類型ではないと主張しました。

実際、別冊判例タイムズにも、336図は駐車スペース進入車の進入動作が通路進行車から見てある程度手前の位置で客観的に認識し得る状態に至っていたことを前提としており、両車が接近した時点で駐車スペース進入車が急に進入動作を始めた場合は該当しないという趣旨の説明が記載されています。

交渉の結果~過失割合10:90で解決~

 過失割合80:20を主張していた保険会社に対して、私たちは、先程のような点を理由に、今回のDさんの交通事故は別冊判例タイムズ336図で検討するべきではないと主張しましたので、交渉材料として同種の交通事故の裁判例をいくつか見つけて交渉を始めました。

また、Dさんとしては、100%相手方の過失でご自身には過失はないと主張されていましたので、私たちも、過失0:100と主張できる要素はないか検討しました。

そして、少し無理な主張ではありましたが、今回の衝突場所は⑦の駐車スペースから多少離れていましたので、単なる通路上での逆突事故(バックするときに後方不注意によって他の車に衝突する事故)で、Dさんに過失はないと主張してみました。

そうしたところ、相手方保険会社もこちらの主張を理解したものの、Dさんも衝突を避けられないほどに車間距離を詰めていたことは過失になると主張され、0:100は受け入れられないとのことでした。

そして、10:90であれば了承するという回答でしたので、Dさんもその提案に納得され、裁判にならずに示談が成立しました。

まとめ

今回のDさんの場合、結果的に80:20から10:90と被害者と加害者が逆転するほど大きく過失を修正することができました。

今回の相手方保険会社の担当者も、当初は別冊判例タイムズの336図の類型を基に考えていましたので、おそらくDさんご自身だけで納得の行く示談はできなかったと思われます。

Dさんは、もともと0:100とお考えでしたが、ご自身も前を走っていた相手方との車間距離を詰めていたことは理解しており、そのような理由ならご自身の過失についても納得できると快く示談に応じました。

確かに、今回のような交通事故で過失が80:20と主張されたのでは、ご自身に80%もの過失があるとされる理由を理解できないでしょう。

今回も、交通事故自体は軽微な事故で、修理費も高額にはなりませんでしたから、弁護士費用特約が使えなければ、弁護士にご依頼いただくことで費用倒れになっていたかもしれません。

Dさんも弁護士費用特約が使えたことで、弁護士費用のご負担なく私たちにご依頼いただくことができ、納得の行く示談をすることができました。

弁護士費用特約の保険料は少額ですので、万が一のときのために自動車保険に付帯されることをオススメします。

また、私たちの優誠法律事務所では交通事故のご相談は無料です。

全国各地からご相談いただいております!

交通事故の場合、相手方保険会社との交渉は電話や書面で行いますから、全国どこにお住まいの方でもご依頼に支障はありません。

また、弁護士費用特約があれば、私たちが皆さまのお近くに伺う必要がある場合でも、交通費等が支給されますので(SBI損害保険は除く)お気軽にご連絡ください。

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↓過失割合を修正できた他の交通事故事例もご紹介していますので、よろしければ合わせてご覧ください↓

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