過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その2~

2024年11月5日

皆様、こんにちは!

優誠法律事務所です。

今回のテーマも過失割合です。

前回に引き続き、今回も、駐車場内の交通事故での過失割合が問題になった事例をご説明します。

●過失割合とは?

●基本過失割合とは?

●弁護士にご依頼いただいた場合の過失割合の争い方

などについては、前回の記事でご説明していますので、そちらも是非ご覧ください。

今回の事例も、前回の記事でご紹介した事例と同様で、駐車スペースから出てきた車両と駐車場の通路上の車両が衝突した事故ですが、前回の記事の事例とはだいぶ状況が異なります。

駐車場内での事故は必ずしも典型的なものばかりではなく、色々な形で発生しますので、個別に検討する必要があります。

前回のBさんのような事故も、今回のCさんのような事故も、駐車場内の交通事故としては、比較的よく発生するパターンの事故のようで、私たちも過去に何件も同じようなご相談をお受けしました。

同様の事故でお困りの方も多いと思いますから、皆様のご参考になればと思い、ご紹介させていただきます。

今回の依頼者~駐車場内で車VS車の交通事故~

今回の依頼者Cさんは、神奈川県在住で

・専業主婦

・交通事故はコンビニの駐車場内

・相手方に過失割合3:7を主張されている

・幸い交通事故による怪我はなし

・弁護士特約が使用可能

という内容でした。

【本件の争点】過失割合

事故現場の駐車場の写真

上の写真が本件の交通事故の現場となった駐車場です(事故当日の写真ではありませんので、実際の加害者の車両は写っていません。)。

事故発生状況の図

今回の交通事故の当時は、コンビニの4つの駐車スペース(右から①~④)のうち、真ん中の2つに車が停まっており、両端のスペースが空いていました。

今回の相手方(加害者)となった車は右から2番目の②のスペースに停まっていました。

Cさんは、コンビニで買い物をするために出入口からこの駐車場に入り、一番左の④の駐車スペースが空いていたので、そこにバックで停めようと考えて、向かって右側に通路を進み、切り返すために右から2番目の②の駐車スペースのすぐ後ろ辺りで一旦停止しました。

そして、Cさんが、停めようとしていた一番左の駐車場スペースに向かってバックを始めようとした瞬間、②の駐車スペースに停まっていた相手方が、急にバックで出てきてしまい、Cさんの車の左側(助手席側)後部座席付近に衝突してしまいました。

幸いこの交通事故では双方にお怪我はありませんでしたので、双方の自動車の修理費の賠償のみが問題になりました。

Cさんは、事故の際、相手方が車の傍に立っていた人と話をしているように見えたため、まだ出てこないと思っていましたが、相手方は、ちょうどCさんが後方に一旦停止したタイミングで急にバックしてきてしまいました。そのため、Cさんは衝突を避けることができませんでした。

相手方は、この事故の過失割合として3(Cさん):7(相手方)を主張していましたが、Cさんとしては相手方が後方を確認せずに急にバックしてきたことが今回の事故の主な原因なので、ご自身に3割も過失があると言われたことに納得できず、私たちにご相談されました。

幸いCさんの自動車保険には弁護士特約が付いていましたので、弁護士費用のご負担なく弁護士に依頼できることを知り、過失割合を争って欲しいというご希望でご依頼になりました。

基本過失割合は?~判例タイムズの類型との比較~

まず、今回の交通事故の基本過失割合を考えます。

(「基本過失割合とは?」については、前回の記事で説明していますので、こちらもご覧ください。)

相手方保険会社は、今回の事故は、駐車場の通路を走行している車両と駐車スペースから出てきた車両の事故であると主張し、別冊判例タイムズの335図によって、基本過失割合は3:7になると主張していました。

判例タイムズ335図
判例タイムズ335図
基本過失割合30(A):70(B)

しかし、既にご説明したように、Cさんは通路を走行していた訳ではなく、駐車スペースに入るために一旦停止していた状態でした。

なぜ、保険会社がこのような主張をしていたかというと、別冊判例タイムズに載っている駐車場内の交通事故の類型が少ないことが原因のように思います。

実は、別冊判例タイムズには、駐車場内の車同士の交通事故の類型ついては、3種類しか載っていません。

その3種類とは、

・通路上の交差部分での出会い頭の事故(基本過失5:5)

・通路進行車と駐車スペース退出車の事故(基本過失3:7)

・通路進行車と駐車スペース進入車の事故(基本過失8:2)

です。

しかし、駐車場内での交通事故は色々状況で発生しますから、必ずしもその全てが3種類のみに集約できる訳ではありません。

ただ、保険会社は、どうしても別冊判例タイムズを基本に考えますので、無理に3種類のどれかに当てはめようとする傾向があるように思います。

実際、私たちが保険会社と交渉していると、駐車場内の事故では、よく考えずに5:5や3:7だと主張してくる担当者が多い印象を受けます。

今回の担当者も、当初3:7と主張していたのは、無理に別冊判例タイムズの335図(通路進行車と駐車スペース退出車の事故)に当てはめたからではないかと思われました。

当然、私たちとしては、今回の事故は335図とは状況が違うことを指摘して、今回の事故は別冊判例タイムズの類型ではないと主張しました。

Cさんの交渉の結果~過失割合15:85で解決~

ご説明したように、私たちは、今回のCさんの交通事故は別冊判例タイムズに載っている事例ではないと主張しましたので、交渉のベースとなるような同種の交通事故の裁判例が必要と考えて、データベースからいくつか同じような事故の裁判例を見つけて交渉を始めました。

そして、Cさんの場合、一時的であるとはいえ、停止しているところに衝突されたこと(つまり、相手方は後方をちょっとでも確認していればすぐにCさんの車両を発見できました)や、至近距離で衝突しているにもかかわらず、Cさんの車両に長い線状のキズや凹みが付いていたことから、相手方がバックをする際に後方を確認せずにある程度の勢いで出てきた可能性が高いこと(クリープ現象程度の速度でゆっくりバックを始めていれば、当たった瞬間にすぐ止まれるため、長い線状のキズは付かないと思われる)なども指摘して交渉しました。

相手方は、傍に立っていた人と話をしていましたので、おそらく会話に夢中で後方確認を怠ったのだと考えられ、この点が相手方の著しい過失と評価されるべきとも主張しました。

そうしたところ、相手方保険会社もこちらの主張をある程度理解し、過失割合3:7の主張から、15:85まで譲歩しました。

Cさんとしては、ご依頼の際にご自身の過失を2割以下にしたいとご希望されていましたので、15:85という提示を受けて納得され、裁判にならずに示談が成立しました。

まとめ

今回のCさんの場合、結果的に3:7から15:85と大幅に過失を修正することができましたが、相手方保険会社の担当者は別冊判例タイムズの335図にこだわっていましたので、おそらく弁護士に依頼しなければご自身だけで納得の行く示談はできなかったと思われます。

Cさんは、もともと2:8なら示談するとのお考えだったこともあり、予想以上の結果となって大変お喜びいただきました。

このような駐車場内での交通事故のほとんど場合、弁護士費用特約が使えれば、特約の範囲内で弁護士費用が収まりますから、ご自身に弁護士費用をご負担いただく必要はありません。

弁護士に依頼することにデメリットは全くないと思いますので、過失割合で納得できない場合、ぜひ一度弁護士に相談してみてください。

私たちの優誠法律事務所では、交通事故のご相談は無料です。

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投稿者プロフィール

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 甘利禎康 弁護士

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本(出版社:日本実業出版社)