過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その5~
皆様、こんにちは!
優誠法律事務所です。
今回のテーマは駐車場内の交通事故の過失割合です。
これまでいくつか駐車場内の交通事故で過失割合が争われた事案をご紹介しましたが、やはり同様のことでお困りの方が多いようで、記事を読んだ方から過失割合についてのご相談が寄せられています。
今回も別の駐車場内の交通事故の過失割合が問題になった事例をご紹介しますので、皆様のご参考にしていただけますと幸いです。
まず、駐車場内の交通事故をご紹介した最初の記事で
●過失割合とは?
●基本過失割合とは?
●弁護士にご依頼いただいた場合の過失割合の争い方
などについてご説明していますので、そちら(「過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その1~」)も是非ご覧ください。
今回の事例は、ホームセンターのかなり広い駐車場で通路を走行していた自動車同士が衝突した交通事故です。
今回ご紹介するLさんの事故も、大きな駐車場では比較的よく発生するパターンの事故のようにも思いますが、この事故も当初の加害者側保険会社の主張とは大きく異なる結論になりました。
皆様のご参考になればと思い、ご紹介させていただきます。
今回の依頼者~駐車場内で車VS車の交通事故~
今回の依頼者Lさんは、埼玉県在住で
・交通事故はホームセンターの広い駐車場の中
・相手方に過失割合5:5を主張されている
・交通事故による怪我は頚椎捻挫
・治療期間(症状固定までの期間)は約4ヶ月間
・弁護士特約が使用可能
という内容でした。
【本件の争点】過失割合
上が本件の交通事故の現場となった駐車場です(事故当時の写真ではありませんので、実際の当事者双方の車両は写っていません。)。
見にくいですが、事故が起きたのは中央の黒のワンボックス車の奥にある通路の交差部分です。
Lさんは、ホームセンターで買い物を終えて、出口に向かって駐車場の通路を徐行していました。
そうしたところ、Lさんが走行していた通路と交差する右側の通路から同じく出口に向かうために右折しようとして出てきた相手方に衝突されてしまいました。
相手方が走行してきた通路は突き当りになっていて(丁字路交差点のような形状)、路面には停止線と「止まれ」の文字が書かれていましたが、Lさんには相手方が一時停止せずに出てきたように見えました。
しかも、相手方は右折する際に左側(Lさんが走行してきた方向)を全く確認せずに右折しようとしたように見えました。
しかし、相手方は一時停止したと主張していたとのことでした。
相手方の保険会社は、一時停止したという相手方の言い分を前提に、この事故の過失割合として50:50を主張していました。
Lさんとしては、徐行していて一時停止無視の相手方に衝突されたという意識でしたので、相手方保険会社の担当者からお互い様だから過失割合50:50が妥当などと言われたことに納得できず、私たちにご相談されました。
幸いLさんの自動車保険には弁護士費用特約が付いていましたので、弁護士費用のご負担なく弁護士に依頼できる状態でした。
基本過失割合は?~判例タイムズ334図~
まず、今回の交通事故の基本過失割合を考えます。
(「基本過失割合とは?」については、以前の記事で説明していますので、こちらもご覧ください。)
今回の事故は、駐車場の通路を走行している車両同士の交通事故ですので、別冊判例タイムズの334図が基本になりますが、別冊判例タイムズ334図の基本過失割合は50:50になっています(別冊判例タイムズに掲載されている駐車場内の交通事故の3類型については以前の記事「過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その2~」でご説明していますので、そちらもご覧ください。)。
相手方保険会社は、この事故を基本過失割合で解決しようとしていました。
確かに、今回の事故の相手方の主張を形式的に別冊判例タイムズ334図に当てはめると過失割合50:50になり得ますが、以前の記事でご説明したように、駐車場内の事故は別冊判例タイムズに掲載されているような典型的なものばかりではありませんので、個別に状況を検討する必要があります。
基本過失割合からの修正要素
別冊判例タイムズ334図では、左方車(交差点に左側から進入する車両。今回の交通事故の場合はLさん側)が丁字路の突き当りを右左折する場合には、基本過失割合から左方車の過失を10%加算することになっていますが、右方車(交差点に右側から進入する車両。今回の交通事故の場合は相手方側)が丁字路の突き当りを右左折する場合には、過失割合を修正することになっていません。
今回の保険会社の担当者は、形式的にこの点を主張して丁字路の交差でも右方車の相手方に不利に過失割合が修正されることはないと主張しているようでした。
しかし、別冊判例タイムズは、丁字路交差を右左折する車両は、①十字路交差を右左折する場合に比べて左右の確認のみで足りて注意がしやすいこと、②丁字路交差を直進する車両としては突き当りを右左折する車両の方が徐行してくると期待するのが一般の運転慣行であること、から突き当りを右左折する車両の過失を10%加算修正していると解説しています。
そのため、私たちは、今回も突き当りを右折しようとしていた相手方の過失が大きいと指摘して、まず基本過失割合から相手方に不利に10%修正するよう求めました。
さらに、今回の交通事故では、Lさんの車両の右側側面の運転席部分に相手方が衝突していましたので、本当に相手方が一旦停止したのであれば、一旦停止したにもかかわらず、ちょうどLさんの車両が交差部分に進入してくるタイミングであえて右折を始めたことになります。
そのため、本当に一旦停止していればこのような衝突はあり得ないと主張しました。そして、相手方の一時停止違反で15%過失を修正するよう求めました。
交渉の結果~過失割合25:75で解決~
上でご説明したように、過失割合50:50を主張していた保険会社に対して、私たちは、相手方が丁字路交差の突き当り路の右折車であることで10%、さらに相手方の一旦停止違反で15%、基本過失割合から相手方の過失を加算するべきと主張して交渉をしました。
その結果、相手方本人が一旦停止をしていなかったかもしれないと主張を変え、結局、相手方保険会社の担当者も私たちの主張を認め、基本過失割合から25%過失を修正し、25(Lさん):75(相手方)で了承すると回答してきました。
Lさんも、25:75であれば納得できると了承されましたので、裁判にならずに示談が成立しました。
まとめ
今回のLさんの場合、結果的に50:50から25:75に過失割合を修正することができました。
今回の事案は、当初相手方が一時停止をしたと主張しており、ドライブレコーダーの映像もなかったため、なかなか交渉が進みませんでしたが、裁判も辞さない強い態度で交渉したところ、ようやく相手方が非を認めるかたちになりました。
この交通事故では、Lさんは怪我もしており、約4ヶ月間治療をしましたので、通院慰謝料(傷害慰謝料)も相手方保険会社に請求しましたが、過失割合は物損被害だけでなく、人身被害にも反映されます。
そのため、50:50で示談した場合と25:75で示談した場合では、通院慰謝料も大きく変わります。
Lさんの治療期間は約4ヶ月間で、裁判所基準の通院慰謝料が約68万円でしたから、過失割合50:50であれば約34万円のところ、25:75になったことで約51万円になりました。
また、慰謝料の他にも、治療費や通院交通費など全ての費目に過失割合が反映されます。
このように、お怪我をされている交通事故の場合、過失割合は慰謝料等の金額にも大きく影響しますので、簡単に相手方の主張を受け入れるべきではありません。
私たちの優誠法律事務所では交通事故のご相談は無料ですから、納得できない内容で示談してしまう前に一度お気軽にご相談ください。
全国各地からご相談いただいております。
また、他の過失割合を修正できた交通事故事例もご紹介しておりますので、よろしければそちらもご覧ください。
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投稿者プロフィール
法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本(出版社:日本実業出版社)