不倫の証拠集めで注意すべきポイントを解説!

2024年1月8日

前回は不倫の証拠となるものにどんなものがあるかを見てきました。

今回は、これらの証拠を集める際、注意しなければならないことを見ていきたいと思います。

特に最近多い、動画や写真、LINEやインスタグラム、ツイッター、フェイスブック等などの「スマホ関係」の証拠について、注意して見ていきたいと思います。

1 スマホをこっそり見ても大丈夫?

夫や妻のスマホをこっそり見て、LINEのやり取りや画像、動画を確認する、という行為については、民事上の問題と刑事上の問題があります。

それぞれについてみていきましょう。

⑴ 民事上の問題―プライバシー侵害

プライバシー権とは、「私生活などの個人情報を第三者にみだりに公開されない権利」をいうとされていますが、形式上、夫や妻のスマホをこっそり見ることは、このプライバシー権を侵害するものです。

夫婦間であっても、プライバシーは保護される権利です。

保護される権利を侵害するということは、仮に違法性が認められれば、逆に相手から不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)を受ける可能性があるということです。

ただし、夫婦は他人ではないので、保護されるプライバシーの程度は他人とは異なります。

さらに、そもそも不倫が疑われる言動があった場合、スマホを見たとしても、違法性がないとされる可能性があります。

また、違法性が認められたとしても、不倫の違法性の方が大きいことが通常ですので、スマホを見たことの違法性は無視されたり、相殺されたりということもあります。

とはいえ、次に紹介する不正アクセス禁止法に反する行為など、あまりに過度のプライバシー侵害行為は控えるのが無難です。

⑵ 刑事上の問題―不正アクセス禁止法

ア 「不正アクセス行為」とは?

スマホから証拠を集める際、特に気を付けなければならないのは、「不正アクセス行為」に当たらないようにする、という点です。

「不正アクセス行為」とは、簡単に言うと、本来アクセス権限を持たない者が、サーバーや情報システムの内部へ侵入を行う行為です(不正アクセス禁止法4条2項)。

不正アクセス行為をした人には、3年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることになります(不正アクセス禁止法11条、3条)。

不正アクセス行為となると、犯罪として、逆に配偶者に告訴されることもあり得ます。

ただし、ここで注意が必要なのは、「不正アクセス行為」に該当する場面をしっかり把握しておくことです。

不正アクセスについて定義する、不正アクセス禁止法4条2項を見てみましょう。

不正アクセス禁止法4条2項

この法律において「不正アクセス行為」とは、次の各号のいずれかに該当する行為をいう。

 アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能に係る他人の識別符号を入力して当該特定電子計算機を作動させ、当該アクセス制御機能により制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為(当該アクセス制御機能を付加したアクセス管理者がするもの及び当該アクセス管理者又は当該識別符号に係る利用権者の承諾を得てするものを除く。)

 アクセス制御機能を有する特定電子計算機に電気通信回線を通じて当該アクセス制御機能による特定利用の制限を免れることができる情報(識別符号であるものを除く。)又は指令を入力して当該特定電子計算機を作動させ、その制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為(当該アクセス制御機能を付加したアクセス管理者がするもの及び当該アクセス管理者の承諾を得てするものを除く。次号において同じ。)

 電気通信回線を介して接続された他の特定電子計算機が有するアクセス制御機能によりその特定利用を制限されている特定電子計算機に電気通信回線を通じてその制限を免れることができる情報又は指令を入力して当該特定電子計算機を作動させ、その制限されている特定利用をし得る状態にさせる行為

長いうえに意味が分からないと思いますが、ザックリいうと、

①インターネットを通じて

②他人のID・パスワード等を入力したりハッキングしたりすること

が「不正アクセス行為」に当たります。

この定義を前提とすると、スマホ本体のロックを解除して、その中に保存されている動画や画像、LINEのやり取りを見る、という行為は、「①インターネットを通じて」に該当しないので、不正アクセス行為には当たりません

(通信がなされれば不正アクセス行為に当たる可能性があります。)

他方で、以前話題になったクローンスマホなどは、新着メッセージが届くため不正アクセス行為に該当します。

不正アクセス行為は単なるプライバシー侵害にとどまらず、犯罪として程度の重い場合には捜査機関が動くこともありますので、注意が必要です。

そのような行為に至る前に、証拠集めについて弁護士に相談されるべきです。

なお、スマホからは離れますが、不倫相手の自宅に侵入して盗撮を行う等の犯罪行為はもちろんアウトです。

イ 不正アクセス行為をしてしまった場合

つい不正アクセス行為をしてしまったが、離婚や慰謝料請求に使えそうな情報が見つかった、という場合、不貞行為を立証するための証拠として裁判で使えるでしょうか。

これは、「違法収集証拠」と呼ばれる論点ですが、刑事裁判では、違法な手段によって取得した証拠は採用することはできないというルールが厳格に運用されています。

他方、離婚や慰謝料請求を含む民事裁判でも同様のルールはあるものの、刑事裁判ほど厳格なものではありません。

したがって、不正アクセス行為によって得た情報も、離婚や慰謝料請求裁判の証拠に使える可能性はあります

とはいえ、問題となりうる行為であることは間違いないので、控えるのが無難でしょう。

また、不正アクセス行為をしたことについて捜査・起訴がなされないかと不安に思われる方もおられるかもしれませんが、夫婦間の問題である限り、実際に捜査機関が動くケースはかなり限られているのが実情と思われます。

もしも不正アクセス行為で得た証拠がある場合は、それを使う前に弁護士に相談されることをお勧めします。

2 具体的なスマホからの証拠の取り方

画像や動画、LINEのやり取り等、スマホに表示される証拠については、「スマホに画像やトーク履歴を表示させ、そのスマホごと自分のスマホ等で写真や動画を撮る」という方法が一番です。

スクリーンショットを撮る、という方法は、改ざんが疑われるケースもあるためです。

また、LINE等メッセージのやり取りは、そのやり取りのあった日時がわかるようにすることも大切です。

写真だと前後関係が不明確となることもあるため、動画を撮影してトーク画面をスクロールさせることも有効です。

ただし、画質が荒くなり、内容が把握できなくなっていないかには注意してください。

3 まとめ

以上、不倫の証拠収集の際注意すべき点についてご説明しました。

「こんな方法で証拠をとったけど大丈夫かな?」等疑問点がありましたら、私たち優誠法律事務所にぜひご相談ください。

優誠法律事務所では、離婚の初回相談は1時間無料ですので、お気軽にご連絡ください。

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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