過失割合を逆転させた事例~当事務所の弁護士が駐車場内の交通事故で0:100の判決を獲得~
皆様、こんにちは!
優誠法律事務所です。
今回のテーマは駐車場内の交通事故の過失割合です。
今回は、駐車場内の交通事故で、双方が被害主張(自身が被害者との主張)をして争った裁判で、ご依頼者様の過失なし(0:100)との判決を獲得できた事例をご紹介します。
今回のご依頼者様は、当ブログで以前ご紹介した駐車場内の交通事故の記事をご覧になって当事務所にご相談いただきました。
駐車場内の交通事故は様々な形で発生しますが、別冊判例タイムズに掲載されている自動車同士の駐車場内の事故類型は3つしかありません(この3類型については以前の記事「過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その2~」でご説明していますので、そちらもご覧ください。)。
そのため、この3つの類型に当てはまらない事故も多いですが、保険会社はどうしてもこの3類型に当てはめようとする傾向が強い印象があり、適切に過失割合を検討できていないケースも多いように思います。
今回ご紹介する事例も、相手方保険会社が3類型の一つ(336図)に当てはめようとしており、交渉では譲りませんでしたが、裁判所にはご依頼者様の主張を認めてもらうことができました。
同じような事故状況の方からご相談いただくことも多いので、お困りの方のご参考になれば幸いです。
今回の依頼者~駐車場内で駐車区画進入車VS通路進行車の交通事故~
今回の依頼者Vさんは、岡山県在住で
・事故現場は大型店の広い駐車場の通路上
・相手方が、空いている駐車枠に慌てて入れようとして後退し、通路で一時停止していたVさん車両に逆突した事故
・ドライブレコーダーは双方ともなし
・相手方に過失割合80(Vさん):20(相手方)を主張されている
・Vさんは事故によって怪我をされたにもかかわらず、相手方保険会社がVさんの過失割合が大きいと主張して治療費の支払いを拒否したため、人身傷害保険で治療していた(幸い後遺障害はなし)
・弁護士費用特約が使用可能
という内容でした。
【本件の争点】過失割合

上が本件の交通事故の現場となった駐車場です(事故当時の写真ではありませんので、実際の当事者双方の車両は写っていません。)。

Vさんは、交通事故直前、店舗での買い物を終え、ご自身の車を運転して駐車場出口に向かって通路を走行していました。
このとき、この駐車場はとても混んでいて通路の車の流れも多く、ほぼ満車の状態でしたが、一つだけ駐車枠が空いていました。
Vさんが通路を徐行していたところ、この空いていたスペースの正面の場所に停止している車(上の図のA)がいたため、駐車枠に入れようとしているのではないかと思って、この駐車枠の手前で一時停止しました。
そうしたところ、次の瞬間、Vさんが道を譲ろうと思っていた車(A)の奥にいた相手方(上の図のイ)が、Aより先に空いている駐車枠に入れようとして慌ててバックしてきました。
相手方の主張では、もともとこの駐車枠にバックで入れるために車の前部を右に振って一時停止したとのことでしたが、相手方がいた場所は丁字路になっていて、Vさんからは相手方は右折して奥の方に行くように見えたとのことでした。
このとき、相手方は、空いている駐車枠が他になかったことから、駐車枠を確保するためにかなり焦っていたようで、アクセルを踏み込んで相当なスピードでバックしてきました。
そして、そのスピードのせいか、少し膨らむようなかたちになり、駐車枠の手前で停まっていたVさん車両に衝突してしまいました。
しかも、相手方は、後方を確認しておらず、衝突するまでVさんの車両が停車していることに気が付きませんでした。
Vさんとしては、通路上で停止していたところに逆突されており、しかも、相手方が入れようとした駐車枠の手前で停まっていた訳ですから、相手方が膨らんで後退しなければ衝突しなかったという事情もあり、過失割合は0(Vさん):100(相手)と考えていました。
しかし、相手方の保険会社は、駐車区画進入車と通路進行車の事故類型の別冊判例タイムズ336図が適用されるとして、基本過失割合は80(Vさん):20(相手)と主張していました。
Vさんとしては、ご自身の過失の方が大きいという主張に到底納得できず、私たちのブログの記事(過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その3~)をご覧になって、別冊判例タイムズ336図は適用されないのではないかとご相談いただきました。
幸いVさんの保険には弁護士費用特約が付いており、弁護士費用や交通費・日当などのご負担なくご依頼いただくことができました。
基本過失割合の検討~判例タイムズ336図に該当するか?~
まず、今回の交通事故の基本過失割合を考えます。
(「基本過失割合とは?」については、以前の記事「過失割合を修正できた事例~駐車場内の交通事故その1~」で説明していますので、こちらもご覧ください。)
今回の事故を、駐車区画に進入するために後退していた相手方と、通路を通行していたVさんが衝突した事故と考えれば、別冊判例タイムズの336図に該当するという判断もあり得ます。相手方保険会社は、終始このような主張をしていました。

基本過失割合は80(Ⓐ):20(Ⓑ)
仮に、この336図を前提とすると、相手方保険会社の主張するように基本過失割合は80(Vさん):20(相手)となります。
しかし、336図は、通路進行車から見てある程度手前の位置で、客観的に駐車区画進入車の進入動作が認識し得る状態に至っていたことを前提としています。
そのため、今回のように通路進行車が駐車枠のすぐ手前まで来ている状態から駐車区画進入車が急に進入動作を始めた場合はこの類型に該当しません。
このように、本件の交通事故は別冊判例タイムズの類型には当てはめることができませんので、過失割合は個別事案の状況に応じて検討することになります。
過失割合の検討~停止中車両への逆突との主張~
上でご説明したように、今回のVさんの交通事故は、別冊判例タイムズの336図は適用されないと考えましたので、当事務所へのご依頼後、すぐに相手方保険会社に私たちの考えを伝えて再検討を促しました。
そして、今回の事故は、通路で停止していたVさんの車両に相手方が逆突した事故でしたので、私たちとしては、Vさんが何らかの義務に違反したことはなく、事故を回避することもできなかったため(回避可能性がない)、基本的にVさんには過失はないと主張しました。
そして、相手方は、バックをする際に後方を注視する義務があったにもかかわらず、衝突するまでVさんの車両に気が付いておらず、十分な後方確認をせずに後退したことは明らかで、かつ、慌てていてハンドル操作も不適切で膨らんでしまったことで衝突した訳ですから、過失割合は0(Vさん):100(相手方)であると主張しました。
しかし、相手方本人が、自分が被害者だと強く主張しているとのことで、相手方保険会社も80:20の主張を譲りませんでした。
しかも、相手方本人は、後方を注意してからバックを始めていて、そのときにはVさんの車両は見えなかったから、Vさんが相当な速度で通路を走ってきて衝突したのではないかと主張しているとのことでした。
今回の事故では、このように双方の言い分が食い違っている状態でしたが、双方にドライブレコーダーがなく、客観的な証拠が乏しい状況でした。
そこで、私たちは警察の実況見分調書を取り寄せましたが、実況見分が相手方のみの立会いで行われており、残念ながら、ほぼ相手方の主張する通りの内容で調書が作成されていました。
その後、しばらく交渉を続けたところ、相手方から過失割合は50:50であれば和解するという返答はありましたが、Vさんとしては、停止していただけで50%も過失を取られるということに納得できませんでした。
また、Vさんは、ご自身の人身傷害保険で治療をされていたため、治療終了後に人身傷害保険から慰謝料などを受領され、これと裁判所基準の慰謝料との差額を相手方保険会社に請求しました。
しかし、相手方保険会社は、これに対しても、過失割合は50:50までしか認めず、人身傷害保険の保険金は相手方が支払ったものと同様に扱うとの主張で、既にVさんが賠償金の50%以上を受け取っている以上、支払えるものはないとの回答でした。
なお、この相手方保険会社の既払金の主張は、「訴訟基準差額説」と言われる裁判所の考え方とは異なります。
訴訟基準差額説では、仮にVさんに過失があっても、人身傷害保険の保険金はVさんの過失の方から充当していきますので、相手方に請求できる部分が発生します。
この訴訟基準差額説については、過去の記事でも解説していますので、そちらもご覧ください。
過失のある被害者でも100%の賠償を受ける方法~人身傷害保険と訴訟基準差額説~
このように、残念ながら、今回の事故では交渉が決裂しましたので、裁判での解決を目指すことになりました。
裁判の結果~過失0の判決を獲得~
裁判では、Vさんのご主張通り、過失割合は0:100で主張することし、Vさん車両の修理費を満額払うよう請求しました。
また、お怪我の慰謝料などについても、人身傷害保険と裁判所基準との差額を請求しました。
これに対して、相手方は、裁判上でもVさんが通路を走行してきて衝突したと主張して、過失割合は当初主張していた80(Vさん):20(相手)であると反論してきました。
そして、その証拠として、上でご説明した相手方の言い分が反映されている警察の実況見分調書を提出しました。
これによると、Vさんが衝突時に停止しておらず、走行中に衝突したことになっており、しかも、衝突位置は相手方が入れようとしていた駐車枠の前になっていました。
つまり、Vさんの主張である
①通路に停止していたこと
②空いていた駐車枠の手前で停止していたこと
の2つについて、否定する内容になっていました。
今回は、相手方のみの立会いで実況見分が行われていましたが、それでも、このように刑事記録でVさんの主張の重要な部分を否定されている状態でしたので、正直、かなり厳しい状況ではありました。
そこで、私たちは、まず、衝突時にVさんが停止していたことを証明するために、Vさんの保険会社のアジャスターに協力を求め、双方車両の損傷状況を分析してもらいました。
そして、アジャスターから、車両の状態から考えるとVさんが停止状態であったと推認できるとの回答がありましたので、その点を意見書にしてもらい、裁判所に提出しました。
また、相手方が衝突するまでVさん車両の存在に気が付いていなかったことを指摘し、Vさんが走行していたという点は相手方の勝手な想像に過ぎないと指摘しました。
衝突位置の主張については、Vさんが事故直後に現場で撮影していた写真や弁護士が現場確認に行った際に撮影した写真を証拠として提出して、相手方の主張や実況見分調書の記載が実際の現場の状況と異なることなどを指摘し、相手方の言い分は信用できないと主張しました。
その後、裁判官が和解を勧めましたが、相手方がこれを受け入れませんでしたので、最終的に判決が出されることになりました。
そして、判決では、基本的にVさんの主張が全面的に認められ、過失割合は0(Vさん):100(相手方)の判断が示されました。
駐車場内の事故で、このように0:100の判決が出ることは珍しいですが、今回は、Vさんが駐車枠の手前で停止していたと事実認定されたことが、Vさんの過失なしと判断された大きなポイントだったように思います。
まとめ
今回のVさんの場合、裁判で争ったため、解決までに時間がかかりましたが、結果的に相手方の80(Vさん):20(相手)という主張から0:100へと過失割合を逆転させることができました。
特に、今回の事例では、客観的証拠が少なく、相手方に有利な実況見分調書が作成されていましたので、難しい状況でしたが、アジャスターの協力などもあり、相手方の主張を崩すことができました。
今回のVさんのように、相手方保険会社から判例タイムズ336図を理由に過失割合80%だと言われて困っているというご相談はとても多く、日本全国から同じような事例のご相談を多数いただいております。
もちろん個別の事情によりますので、全ての事案で過失割合を修正できる訳ではないですが、当事務所にご依頼いただいた後に過失割合を修正できた事例も多いです。
私たちの優誠法律事務所では、交通事故のご相談は無料で対応しておりますので、お気軽にご相談ください。
全国各地からご相談いただいております。

また、他の過失割合を修正できた交通事故事例もご紹介しておりますので、よろしければそちらもご覧ください。
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交通事故被害者のための専門サイトも開設していますので、そちらもぜひご覧ください。
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投稿者プロフィール

法律の問題は、一般の方にとって分かりにくいことも多いと思いますので、できる限り分かりやすい言葉でご説明することを心がけております。
長年交通事故案件に関わっており、多くの方からご依頼いただいてきましたので、その経験から皆様のお役に立つ情報を発信していきます。
■経歴
2005年3月 早稲田大学社会科学部卒業
2005年4月 信濃毎日新聞社入社
2009年3月 東北大学法科大学院修了
2010年12月 弁護士登録(ベリーベスト法律事務所にて勤務)
2021年3月 優誠法律事務所設立
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (出版社:日本実業出版社)