別居する際に注意しなければならないことは?

2024年10月4日

以前、離婚を決意したら別居すべき、という趣旨のブログを書きました。

(詳しくは「離婚意思が固まったら・・・」をご覧ください。)

ただし、後の離婚のことを考えたとき、別居の際に注意しておくべきことが何点かあります。

今回は、離婚を考え別居する際に、注意すべき点をご紹介します。

有責配偶者とならないよう注意

夫婦は、同居義務を負っています(民法752条)。

そのため、何も理由がないのに別居を開始した場合、この義務に反することになり、場合によっては離婚原因の1つである「悪意の遺棄」(民法770条1項2号)に当たるとされることもあり得ます。

別居が「悪意の遺棄」に該当するとなると、別居を開始した夫または妻が「有責配偶者」となります。

有責配偶者からの離婚請求はいくつかの要件を乗り越えなければならず、困難なものになります。

とはいえ、別居開始が悪意の遺棄となり、有責配偶者と扱われるケースはさほど多いわけではありません

そもそも、理由がないのに別居を開始する人はそういません。

注意すべきは、夫婦の一方のみが収入を得ており、もう一方が専業主婦(主夫)やそれに近いケースで、別居開始に強い理由もないのに、収入を得ている方が別居を開始し、その後の生活費を一切払わないようなケースです。

このようなケースでは、別居を開始した方が有責配偶者とされる可能性が高く、別居前に生活費について話し合いをし、合意に基づいて別居を開始すべきです。

他方、DV等身体、精神への悪影響が生じているケースでは、直ちに別居を開始し、必要に応じて接近禁止命令等の申立てを検討する必要があります。

生活費

別居を考える際、多くの方にとって生活費をどのように工面するかという点は大きな関心事でしょう。

先ほど挙げた民法752条は、夫婦互いの協力・扶助義務についても定めています。

この義務に基づき、夫婦の一方は、他方に対して、婚姻費用と呼ばれる生活費の請求ができます。

これは基本的に別居中の夫婦であっても同様です。

どの程度の婚姻費用がもらえるか、という点は、概ね裁判所の公開している婚姻費用算定表に従うことになります。

したがって、別居を開始するにあたり、婚姻費用の額について合意で決めることができればベストです。

ただ、別居開始前には合意できない場合が多く、その場合は、別居後に協議で決定するか、調停や審判を申し立てることになります。

注意すべき点は、婚姻費用の支払い開始月は、「別居月」ではなく「請求月」とされていることです。

「請求月」とは、実務上調停や審判の申立月とされることが多いです。

どういうことかと言いますと、調停や審判を申し立てたからといって、すぐに婚姻費用が決まるわけではありません。

話し合いや審理を経て、婚姻費用が決定されることになります。

例えば、1月に別居を開始し、3月に婚姻費用の調停を申し立てても、調停が成立するのは6月だったりするわけです。

仮にこのケースで婚姻費用が毎月10万円と決まった場合、「3月から5月までの3か月分30万円と、6月からは毎月末日に10万円を支払う」というような調停内容になります。

別居開始の1月からの婚姻費用がもらえるわけではありません。

そのため、婚姻費用を決めずに別居を開始した場合、婚姻費用の調停は早めに申し立てることをお勧めします。

調停ではなく協議で解決したい、という強い希望がある場合でも、少なくとも内容証明郵便で婚姻費用の請求月を明らかにしておくべきでしょう。

不倫等離婚原因の証拠集め

別居をしても相手が離婚に応じない場合は、証拠等によって離婚原因の立証をする必要があります。

(なお、別居自体が離婚原因になりうることは以前お伝えしたとおりです。)

例えば不倫が原因で離婚したい場合は、不倫があったことの立証を行う必要があります。

そのためには証拠が必要ですが、この証拠は別居後に収集することが困難なことが多いです。

したがって、可能であれば離婚原因の証拠集めは別居前に行っておきたいところです。

(証拠集めについては「不倫かも…証拠の種類について解説!」と「不倫の証拠集めで注意すべきポイントを解説!」の記事もご覧ください。)

ただし、DV等緊急を要する場合は、証拠集めを考えるよりもまず別居を開始することが大切です。

財産調査

離婚する際は財産分与を行うケースが多いですが、「相手がどのような財産を持っているか」ということについては、基本的に自分で把握する必要があります。

弁護士会照会等の方法で財産のありかを調べることもありますが、万能ではありません。

例えば、交渉中に弁護士会照会で相手の預金残高を調べるためには、最低限銀行名を支店名が明らかになっている必要があります。

そして、別居後に財産を隠されてしまうと、これを把握することは難しいケースが多いです。

他方、同居中であれば、通帳や保険証券、クレジットカードの明細等から、どこの銀行で預金を持っていてその残高はいくらか、ということや、どこの生命保険に加入していて解約返戻金はいくらか、どこの証券会社でどこの株をいくつ持っているか等の把握が比較的容易です。

可能であれば、別居開始の前に、相手の財産の一覧を作っておくことが有用です。

親権

お子さんがいる場合、離婚の際には父母どちらかを親権者として決める必要があります。

近年日本でも離婚後の共同親権についての議論が高まっていますが、現在の法制度では、依然として父母どちらかを親権者として決める必要があります。

親権者を決める際の判断基準として裁判所が最も重視しているといわれるのが「継続性の原則」です。

これは簡単にいえば現状維持で、その時点で監護している親に特に問題がなければ、監護親を親権者とする、というものです。

したがって、親権を獲得したいのであれば、お子さんと一緒に別居を開始し、そのうえで親権者決定の話し合いや調停に臨むのがベストということになります。

別居後、養育環境を整え、養育実績を積み重ねられれば、親権者の判断においては非常に有利になります。

ただし、違法な子の連れ去りにならないように注意しなければなりません。

別居時の事例ではありませんが、別居後、母の監護養育する子を父が実力で連れ去った事案で、父について未成年略取誘拐罪(刑法224条)が成立するとした最高裁判例もあります。

ひと昔前であれば、子を連れての別居開始に多少の違法性があったとしても、上記の継続性の原則が優先され連れ去った側が親権を獲得するケースがほとんどだったと思います。

ですが、近時は、ハーグ条約加盟の影響からか、裁判所が親権者の判断において連れ去りの違法性を考慮するケースも増えてきています

同意のうえでお子さんと一緒に別居できれば問題ないですが、そうはいかない場合、どのように別居するかという点は難しい判断になりますので、弁護士に相談することをお勧めします。

まとめ

以上、別居に際して注意すべきことをご紹介しました。

特に、親権に関係する部分については、最近はかなりセンシティブな印象です。

ぜひ別居を実行する前に、私たち優誠法律事務所にご相談ください。

優誠法律事務所では、離婚の初回相談は1時間無料ですので、お気軽にご連絡ください。

☎0120-570-670

優誠法律事務所公式HPはこちらから

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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投稿者プロフィール

弁護士栗田道匡の写真
 栗田道匡 弁護士

2011年12月に弁護士登録後、都内大手法律事務所に勤務し、横浜支店長等を経て優誠法律事務所参画。
離婚や不倫に関するトラブルを多く担当してきましたので、皆様のお力になれるように、少しでもお役に立てるような記事を発信していきたいと思います。
■経歴
2008年3月 上智大学法学部卒業
2010年3月 上智大学法科大学院修了
2011年12月 弁護士登録、都内大手事務所勤務
2021年10月 優誠法律事務所に参画