婚姻関係の破綻とは?~別居していても裁判で離婚が認められなかった事例を基に~

2024年4月14日

皆さんこんにちは。赤坂見附駅徒歩3分の優誠法律事務所です。

今回は婚姻関係の破綻について解説します。

夫婦の一方が離婚を望んでいても、他方が離婚を拒否している場合、法定の離婚原因がなければ離婚できません。

法定の離婚原因として明記されているのは「不貞行為」「悪意の遺棄」「3年以上の生死不明」「回復の見込みのない強度の精神病」ですが、もう一つ、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」があります。

「婚姻を継続し難い重大な事由」は、婚姻関係が破綻し回復の見込みがないことを意味するとされていますが、それがどのような場合を指すのかが明確ではなく、また、その判断方法も決まっていません。

例えば、夫婦関係が悪化して別居している場合、婚姻関係が破綻しているといえそうですが、もう少し踏み込んで考えてみますと、妻が家を出ては行ったけれども、度々自宅に戻って夫にご飯を作ってあげたり、年に数回夫婦で旅行に行ったりしている場合は、婚姻関係が破綻しているといえるのでしょうか。

または、夫婦喧嘩の末にいったん冷却期間を置こうということで夫が家を出て行き、その後も夫婦の対話が重ねられている場合、婚姻関係が破綻しているといえるのでしょうか。

これらの場合、おそらく婚姻関係が破綻しているとまでは判断されないと思われます。

夫婦関係が回復する見込みがないとまではいえないからです。

何年別居していれば破綻が認められるという明確な基準はなく、逆に、別居していなくても破綻が認められる場合もあります。

双方の意思、婚姻期間や夫婦円満であった期間、家庭内での言動、性的関係の有無、別居しているのであれば別居の原因、別居後の様子などなど、夫婦関係に関する様々な事情を考慮して、夫婦関係が破綻しているかどうかが判断されることになります。

このように、婚姻関係が破綻しているかどうかは、様々な具体的事情を総合して判断されるため、どのような結論になるかを予想することは難しい場合が多いです。

本記事では、別居している夫から離婚裁判を起こされた妻側が離婚を阻止できた事例に沿って、婚姻関係破綻について考えていきます。

皆様のお役に立つと幸いです。

ご相談内容~自ら別居したら婚姻関係破綻と判断されてしまうのか~

A子さんから、夫のB男さんとの離婚について相談を受けました。

A子さんB男さん夫婦は結婚して30年近く経っていて、お子さんは既に独立していました。

A子さんは、数年前からB男さんに離婚を迫られていて、最近特にB男さんの態度が強硬になったため耐えられず自宅を出てしまったということでした。

その後、B男さんから離婚調停を起こされ、A子さんが離婚を拒否したため調停は不成立となったものの、すぐに離婚裁判を起こされてしまったとのことで、相談にいらっしゃいました。

A子さんは、B男さんとの関係が元に戻るとは考えにくいけれども積極的に離婚したい訳ではなく、また、現在支払われている婚姻費用をできるだけ長くもらいたいと考えていました。

そして何より、自分は夫から執拗に離婚を求められ続けることに耐えられず家を出てしまったが、これは夫から追い出されたのと同じであって、「自ら家を出て別居しているのだから婚姻関係破綻」と判断されるのはどうしても納得がいかない、とおっしゃっていました。

裁判では要点を押さえた主張と立証が要求されることと、ここで離婚が成立してしまうと婚姻費用の支払いがなくなりA子さんにとって大きな不利益となることから、是非離婚を阻止すべく弁護士を付けた方がよいとお伝えし、ご依頼いただきました。

裁判~別居していても婚姻関係は破綻していない~

裁判において、B男さん側は、予想どおり、A子さんが自ら家を出て行ったのであるからA子さんには婚姻継続の意思はなく、夫婦関係は既に破綻していると主張してきました。

B男さんの主張のとおりA子さんが自らの意思で家を出たということであれば、それは婚姻関係の破綻を根拠付ける一つの事情となってしまい、離婚を望まないA子さんにとっては非常に不利な事情となります。

そこで、A子さんが別居前にB男さんから執拗に離婚を求められていたこと、これに耐えかねて自ら家を出たものの、それは決して離婚をしたいからではなく、あくまでもB男さんからの離婚要求から逃れるための別居であったこと、そして、別居後も夫婦間に日常のコミュニケーションがあったことを主張するとともに、主張を裏付ける証拠をできる限り提出しました。

証拠としては、一つには、B男さんが離婚に応じないA子さんに嫌がらせをした様子を撮影した写真がありました。

また、A子さんは、夫婦の問題をカウンセラーに相談していたので、そのカウンセラーに協力してもらい、相談時のメモやカウンセラーの陳述書を証拠として提出しました。

これらにより、A子さんがその意思に反して家から追い出されたという主張の立証に努めました。

裁判官から和解を進められましたが、離婚裁判における和解は、通常、離婚を前提としたものになることから、和解は直ちにお断りしました。

こうして、尋問手続きが行われることになりました。

尋問手続きでは、ご本人が慣れない場面に極度に緊張して不利なことを口走ったりしてしまうということが往々にして起きますので、そのようなことがないよう繰り返し練習をして万全の準備をして臨みました。

その結果、尋問手続きにおいて、A子さんはご自分の認識や考えを自らの言葉で堂々と主張することができました。

そして、最終的に、こちらの主張が全面的に認められ、離婚を阻止することができました。

別居期間が判決時点で約1年間に過ぎなかったことも勝訴の大きな要因でした。

まとめ

本件においては、A子さんの主張を立証することができれば離婚は認められないだろうと見通しを立てていましたが、その立証がうまくいくかどうかは正直不安がありました。

結果として立証もうまくいき、別居しているとしても婚姻関係は破綻していないとの判断となった訳ですが、婚姻関係破綻の判断は弁護士にとっても非常に難しい場合があります。

同じようなケースでも、別居期間が長期に及んでいれば、婚姻関係が破綻していると判断される可能性は高くなります。

離婚について悩んでいる方、優誠法律事務所では、離婚に関するご相談を初回無料で承ります。

弁護士が、これまでの経験や情報収集・分析により、できる限り正確な見通しを立てた上で、最善の解決を探っていくお手伝いをさせていただきます。

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投稿者プロフィール

 髙玉亜紀 弁護士

約10年間の専業主婦時代を経て弁護士になり、これまで、離婚や労働を始めとする民事事件、そして、刑事事件を数多く手がけてきました。今までの経験をご紹介しつつ、併せて法的なポイントを分かり易くお伝えしていきます。
■経歴
2000年3月 早稲田大学政治経済学部経済学科卒業
2013年3月 早稲田大学大学院法務研究科修了
2015年12月 最高裁判所司法研修所(東京地方裁判所所属) 修了 
2016年1月 ベリーベスト法律事務所入所
2023年2月 優誠法律事務所参画
2024年1月 企業内弁護士に転身
■獲得した判決
東京地裁判決令和2年6月10日判決(アクサ生命保険事件)(労働判例1230号71頁)