面会交流を拒否されたらどうする!?~調停で面会交流の実現に漕ぎ着けた事例をもとに~
皆さんこんにちは。
今回は「面会交流」について、具体的な事例を基にご紹介します。
離婚に際して、子どもを監護している親が面会交流を拒否するということがよくあります。
面会交流については子の利益を最優先に考慮しなければならないとされていますが(民法766条1項)、親が感情面から相手に子どもを会わせたがらなかったり、離婚条件を決めるに当たって面会交流が交渉の材料に使われたりと、現実には様々な問題が絡んでくることが多いです。
裁判所は、面会交流を求める親が暴力を振るうといった特段の事情がない限り、面会交流を行う方向で考えますし、多くの弁護士も基本的には同様の立場のようですが、結局のところ、面会交流を行うには子どもを監護している親の協力を得ることが不可欠ですから、いかに監護親をその気にさせるかがポイントになってきます。
本記事では、苦労して面会交流の実現に漕ぎつけた事例に沿って、面会交流が実現するまでの経緯を詳しくお伝えします。
皆さんのお役に立てれば幸いです。
ご相談内容 ~不貞をしてしまったが子どもに会いたい!~
私たちは、A男さんから、妻のB子さんとの離婚について相談を受けました。
A男さんB子さん夫婦にはまだ小学校に上がる前の息子さんがいました。
また、夫婦でローンを借りて購入した自宅などの財産がありました。
そして、ここが話合いにおいてネックになってくるところなのですが、A男さんが不貞をしたことで夫婦の関係が悪くなり、A男さんは家族と住んでいた自宅を出て不貞相手と一緒に暮らしているという事情がありました。
A男さんは、離婚後も息子と定期的に会いたいと希望していました。
適正な条件で離婚するために弁護士を付けた方がよいということと、A男さんが前面に出てしまうとB子さんが感情的になり易いと思われることをお伝えし、離婚の交渉をご依頼いただきました。
交渉 ~面会交流に応じてもらえない!~
B子さんにお手紙を送り、離婚に向けて話合いを進めていきたいことと、まずはB子さんの意向をお聞きしたいことを伝えました。
不貞をしてしまったA男さんが加害者ということにはなってしまいますから、交渉においては、B子さんの怒りを増長させないよう配慮する必要がありますが、同時に、こちらの言い分をしっかり伝えていかなければなりません。
弁護士が入ったことで余計に話がこじれたなどという事態にならないために、言葉遣い一つとっても慎重にならざるを得ません。最初のお手紙は特に気を遣うところです。
B子さんの方もすぐに弁護士をつけ、離婚すること自体については同意するので条件について話合いを進めていきたい旨の連絡がきました。
こちらからは、交渉の始めから、息子に会わせてほしいと伝えていました。
A男さんは、もう数か月もの間、息子さんに会っていませんでしたので、一日も早く会いたいと希望していました。
しかし、B子さん側からの回答は、離婚が成立するまでは面会交流はしないというものでした。
交渉で面会交流を実現させることは難しいと思われたため、調停を申し立てることを勧めましたが、A男さんは、調停までするのはためらわれるので当面は交渉で進めていきたい、との意向でした。
そこで、こちらから、子どもにとっては父親からの愛情を注がれることが望ましいとして、早期の面会を再度求めました。
しかし、B子さんからの回答は、やはり離婚条件が整うまでは面会に応じないというものでした。
A男さんと話合い、できるだけ早期に離婚条件をまとめる方向で動いていくことになりました。
本件では、不貞慰謝料の金額については早期に合意できていました。
問題は、夫婦でローンを組んで購入した自宅(オーバーローン)の処分でしたが、少し時間はかかったものの、思いのほか良い値段で売却でき、離婚に向けて大きく前進した、つまりは面会交流の実現もぐんと近付いた、と思われました。
そこで、離婚条件もほぼまとまってきたとして、再度、面会交流を申し出ました。
ところが、ここにきて、B子さんが、面会交流をしたければ調停を申し立てろと言ってきました。
B子さん側にも代理人がついていますし、このように話をひっくり返されることは予想していなかったのですが、B子さんの代理人も、B子さんを説得することができなかったようです。
A男さんには、ここまで交渉で進めてきたのだから何とか交渉で終わらせたいという思いがありました。
B子さんに対し、離婚条件が整ったら面会交流に応じると言っておきながら今になって前言を翻すことは信義則に反すると抗議すると共に、合理的な理由なく面会交流に協力しないことは、監護権や親権を決める際に不利な事情となると主張しました。
しかし、B子さんは全く折れず、交渉で面会交流を実現することは不可能という事態に陥ってしまいました。
それまでずっと調停申立てを渋ってきたA男さんですが、こうなってしまうと調停を申し立てる他ないとご説明してご理解いただき、早急に調停を申し立てることにしました。
調停 ~面会交流の実現へ~
調停が始まると、B子さんは急に面会交流に応じる姿勢に転じました。
B子さんは、A男さんを信用できないことを理由に、第三者機関(面会交流がスムースに行われるよう、両親の間に入って面会交流をサポートしてくれる機関のことです。)での面会交流でなければ応じないと主張してきて、A男さんの方でこれを受け入れました。
B子さんからは、第三者機関の利用料を全額負担しろとも言われましたが、第三者機関の利用を希望しているのはB子さんですから、さすがにそれは呑めないと反論し、利用料は折半することで話がつきました。
こうして、何とか面会交流に漕ぎ着けることができました。
A男さんは、ようやく息子に会えると涙を流して喜んでいました。
まとめ
本件においては、以上のように時間をかけて面会交流を実現させましたが、より早期に調停を申し立て、調停で話がまとまらなければ審判手続きに移行し、家庭裁判所から面会交流を認めてもらう、という方法もあったと思います。
しかし、いくら裁判所が面会交流をしなさいと言っても、監護親に面会交流に協力する気がなければ、面会交流が円滑に続いていかないリスクが高くなってしまいます。
また、監護親が嫌々面会交流に応じているような状況では、子どもは両親の板挟みとなって苦しみます。
裁判所も、それをわかっているので容易に審判に移行せず、できるだけ両親の合意に基づいた面会交流を行おうとするのです。
本件では、B子さんの、不貞をしたA男さんに絶対に子どもを会わせたくないという強い気持ちが、ある程度の時間をかけて調停までしたことで、「ここまで手間暇かけさせてやったからもうそろそろ面会を認めてやってもいいか」という気持ちに変化していったように思えます。
A男さんは、小学校入学の時期を挟む、お子さんがどんどん成長して変わっていく時期に、長いことお子さんと会うことができませんでした。
本来は、親御さんたちが、お子さんにとってどうするのが最善なのかを一番に考えられたらいいと思います。
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投稿者プロフィール
約10年間の専業主婦時代を経て弁護士になり、これまで、離婚や労働を始めとする民事事件、そして、刑事事件を数多く手がけてきました。今までの経験をご紹介しつつ、併せて法的なポイントを分かり易くお伝えしていきます。
■経歴
2000年3月 早稲田大学政治経済学部経済学科卒業
2013年3月 早稲田大学大学院法務研究科修了
2015年12月 最高裁判所司法研修所(東京地方裁判所所属) 修了
2016年1月 ベリーベスト法律事務所入所
2023年2月 優誠法律事務所参画
2024年1月 企業内弁護士に転身
■獲得した判決
東京地裁判決令和2年6月10日判決(アクサ生命保険事件)(労働判例1230号71頁)