高額な財産分与を獲得できた事例
今回のテーマは、離婚に伴う財産分与です。
財産分与は、離婚後も2年以内であれば請求することができますが、財産分与に関するご相談は、未だ離婚に至っていない方から、離婚に付随する問題として相談されることが殆どです。
当事者間で争いになる点は様々で、例えば、夫婦名義の財産であっても特有財産として財産分与の対象外になるか否か、子供名義の預貯金は財産分与の対象になるか否か、将来支給される退職金は財産分与の対象になるか否か、住宅ローン債務がある不動産はどのように考えるべきか等、多種多様です。
また、財産分与の話し合いをする際は、大前提として、夫婦それぞれがどのような財産を有しているのかを適切に把握しておく必要もあります。
このような財産分与について、弊所弁護士が取り扱った事例のうち、高額な財産分与を獲得できた事例をご紹介いたします。
財産分与とは
財産分与とは、夫婦が離婚した場合に、婚姻中に形成した財産を清算するため、財産を所持している側にその分与を求めることをいいます。
財産分与の算定は、基準時(原則として「別居時」)に存在する夫婦の共有財産を確定させるとともに、夫婦が財産形成に寄与した程度を評価して分与割合を決定した上で、具体的分与額を算定するという方法をとります。
寄与度については、実務上、いわゆる「2分の1ルール」が採用されています。
また、財産分与は離婚を前提とする制度ですので、まずは離婚するか否かの協議が必要です。
そのため、夫婦の一方が離婚を拒んでいる場合、そもそも財産分与の協議も難しいでしょう。
離婚の協議はできたとしても、財産分与の協議が調わない場合、まずは離婚調停の申立てに付随する形で財産分与の請求を申し立てることになります。
事案の概要
今回のご相談者のA子さんは女性で、ご主人であるB男さんと結婚してから約10年が経過しており、お子さんは2人いらっしゃいました。
ところがある日、B男さんが他の女性と浮気をしていることが判明しました。
もともと、B男さんには、怒りの矛先をお子さんにぶつける傾向があったこと等もあり、A子さんは離婚することを決意しました。しかしながら、B男さんとの離婚協議はなかなか前に進まず、A子さんは毎日我慢しながら婚姻生活を過ごしていました。
このような状況で、A子さんからご相談がありました。
裁判所外での離婚協議は、本人だけでなく弁護士も行うことはできます。
しかしながら、本件では、これまでのA子さんとB男さんとの離婚協議の経緯を踏まえ、たとえ弁護士が裁判所外での離婚協議を行っても進展はしないと判断しました。仮に、ご依頼いただいたにもかかわらず、裁判所外での離婚協議が進展しなかった場合、その分の弁護士費用が余計に掛かってしまうという結果になります。
そのため、弁護方針としては,離婚調停の申立てをするとともに、この申立てに付随する形で財産分与の請求を申し立てることにしました。
本件調停における争点
本件では、養育費、面会交流、慰謝料、婚姻費用等、様々な点が争いになりましたが、今回は財産分与に絞ってご紹介します。
調停では、B男さんも弁護士を就けていたにもかかわらず、なかなか自身の財産を開示しようとしませんでした。
そのため、これらの財産については、調停期日で開示を要請することに加えて、書面の形にして開示を要請し続けました。
その理由ですが、既にご説明したとおり、財産分与の話し合いをするに際しては、大前提として、夫婦それぞれがどのような財産を有しているのかを適切に把握しておく必要があるためです。
極端な話ですが、夫に財産があるのに、それらの情報や資料等を妻が全く把握していなかった場合には、妻は財産分与を一切受けることができなくなってしまうリスクが高いのです。
また、本件では、B男さんが不貞相手のために支出した費用(交通費、宿泊費、チケット代など)を特定することができました。これらの財産支出は、夫婦共有財産の使い道として、当然ながら全く合理性のないものであるため、財産分与の計算をするにあたっては、これらの支出を夫婦共有財産に持ち戻されなければならないと主張しました。
既にご説明したとおり、財産分与の算定をするにあたっては、まず、基準時(原則として「別居時」)に存在する夫婦の共有財産を確定させる必要があります。
しかしながら、不貞相手のために支出した費用については、たとえ基準時である別居時に、財産として存在していなかったとしても、残っているものとして算定すべきであるという主張です。
さらに、B男さんが不貞相手のために支出した費用を追求するため、B男さんのクレジットカードの利用明細書を提出すること等も求めました。
本件調停の結果
これらの主張をした結果、最終的に、B男さんからA子さんに対して、財産分与として約900万円の支払いをする旨の調停が成立しました。
このような高額な財産分与を獲得できたのは、上記の持ち戻しの主張のほか、当方から財産資料の開示を要請したこともあり,B男さんから、従業員持株制度によって有していた株が開示されたことも大きかったです。
また、財産分与の話ではありませんが、将来、お子さんが大学に入学した場合の養育費についても合意することができました。
本件においては、B男さんが不貞相手のために支出した費用の立証活動は大変でしたが、A子さんとしても、ようやく納得できる離婚をすることができ、苦労した甲斐のある結果を出すことができました
まとめ
はじめにご説明したとおり、財産分与で争いになる点は多種多様です。
それに加えて、財産分与の話し合いをする際には、相手方がどのような財産を有しているのかについても適切に把握しておかなければなりません。
夫婦間で離婚の話し合いをする際、これらの点を整理するとともに合意するというのは、既に関係がこじれてしまっている以上、場合によっては大変難しいと思います。
中には、「自分が稼いだお金だから一切渡さない。財産分与なんて知らない。」と突っぱねられたという相談者の方もいました。
このような場合でも、弁護士に依頼することで、今回ご紹介した事例におけるA子さんのように、納得できる離婚ができるかもしれません。
現在、離婚を考えているけれども、財産分与について相談されたいということでしたら、弁護士に依頼した場合の見通し等も含めて、お話しさせていただければと存じます。
優誠法律事務所では、離婚の初回相談は1時間無料ですので、お気軽にご連絡ください。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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投稿者プロフィール
これまで一般民事事件や刑事事件を中心に、数多くの案件を担当して参りました。これらの経験を踏まえ、難しい法律問題について、時には具体例を交えながら、分かりやすい内容の記事を掲載させていただきます。
■経歴
2009年3月 明治大学法学部法律学科卒業
2011年3月 東北大学法科大学院修了
2014年1月 弁護士登録(都内上場企業・都内法律事務所にて勤務)
2018年3月 ベリーベスト法律事務所入所
2022年6月 優誠法律事務所参画
■著書・論文
LIBRA2016年6月号掲載 近時の労働判例「東京地裁平成27年6月2日判決(KPIソリューションズ事件)」