請求された不貞慰謝料を減額できた事例その3~不貞相手の離婚後に不貞慰謝料を請求された場合~
こんにちは、代々木駅徒歩3分・新宿駅徒歩10分の優誠法律事務所です。
今回のテーマは不貞慰謝料です。
以前から不貞慰謝料を実際に減額できた事例をご紹介して来ましたが、今回は、不貞から時間が経ち、不貞相手が離婚した後で慰謝料を請求された事例で、慰謝料の支払いを回避できたケースについてご紹介します。
過去の不貞行為について、しばらく時間が経過してから慰謝料を請求されることもありますので、同じようなことをお困りの方のご参考になれば幸いです。
事案の概要~数年前の不倫に対して慰謝料請求された事案~
ご相談者のA子さんは独身女性でしたが、数年前に数か月間、妻子ある男性(B男さん)と肉体関係を持ちました。
その後、A子さんとB男さんは関係を解消し、B男さんが離婚したことは聞いていましたが、お互い接点もなく生活していました。
そうしたところ、当時のB男さんの妻であったC子さん本人から、慰謝料300万円の支払いを請求する書面が届き、慌てたA子さんが当事務所にご相談に来られました。
A子さんからお話しを伺うと、B男さんが婚姻中に不貞行為があったことは事実とのことで、金額は別問題として、慰謝料の支払義務が発生していたことは間違いなさそうでした。
もっとも、B男さんとC子さんは離婚しているようでしたが、離婚の際の取り決めの内容がわからない状況でした。
したがって、C子さんとの本格的な交渉に入る前に、B男さんに、離婚の経緯や離婚の際の取り決めについて弁護士から聞いてみることとしました。
不真正連帯債務とは?
なぜ、C子さんとの交渉前に、B男さんとC子さんの離婚時の取り決めについて調査する必要があるのでしょうか。
それは、不貞慰謝料の支払義務が、不貞配偶者と不貞相手との「不真正連帯債務」とされているためです。
不真正連帯債務とは、複数の債務者が同一の内容の給付について履行義務を負う連帯債務の一種です。
不貞配偶者と不貞相手は、被害者である他方配偶者(本件でいえばC子さん)にとって共同不法行為者となるわけですが、共同不法行為者の責任について定めた民法719条1項本文は、共同不法行為者について、「各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う」と定めています。
定義や条文を紹介してもピンとこないと思いますが、不真正連帯債務の重要な特徴として、
①被害者は加害者のどちらにも全額請求できるが、
②損害額を超えて二重取りはできない、
という点があります。
①について、例として、夫が妻ではない女性と不貞し、慰謝料の金額が300万円というケースを考えます。
この場合、妻としては、夫に対して300万円を請求してもいいし、不貞相手女性に対して300万円を請求してもいいということになります。
夫と不貞相手女性に150万円ずつの請求でもいいですし、夫に200万円、不貞相手女性に100万円の請求という形でも構いません。
つまり、300万円の範囲であれば、請求額をどのように振り分けても良いということになります。
(実際は諸事情が複雑に絡んできますが、説明のため事案を簡単にしております。)
このように、妻としては夫と不貞相手女性どちらにも請求できるわけですが、だからと言って、先程のケースでは双方から200万円ずつ、合計400万円を受け取ることはできません。
これが②の意味になります。
先程の例で言えば、妻が受け取ることのできる金額はあくまで総額300万円までであり、それを超えて二重取りはできないということになります。
さて、A子さんの事例に戻りますが、本件ではB男さんはC子さんとすでに離婚しているとのことでした。
離婚しているとなると、その原因によってはB男さんからC子さんに対して、不貞慰謝料が支払われている可能性があります。
(離婚していない場合でもその可能性はありますが、離婚している場合の方がその可能性が高いのが一般的です。)
仮に、不貞慰謝料が支払われていれば、それは不真正連帯債務ですので、先程の②の特徴から、A子さんはC子さんに対し、「二重取りはできない」という反論ができることになります。
したがって、本件ではB男さんに、C子さんとの離婚時の取り決めについて聴取することにしました。
聴取・交渉経緯~不貞慰謝料の支払いを否定~
B男さんに連絡したところ、C子さんとの離婚は弁護士を入れて解決したとのことで、弁護士の連絡先を教えてもらいました。
その後、離婚時の取り決めについて弁護士に聞くことについてB男さんの了解を得たうえで、B男さんの弁護士から事情をお聞きすることができました。
そうしたところ、B男さんの弁護士からは、C子さんとの離婚の際、不貞を認めた上で慰謝料300万円を支払う合意書を作成し、すでにB男さんからC子さんにその通り支払い済みであることが確認できました。
300万円という金額は、本件の不貞行為の事情に照らして、C子さんの損害額全額に相当すると思われました。
したがって、上記②から、さらなる二重取りはできないということになります。
以上を前提に、C子さんに対しては、不貞について謝罪するとともに、他方で、損害額全額についてB男さんから支払い済みであり、不貞慰謝料は二重取りができる性質のものではないので、追加でA子さんから支払う慰謝料はない旨を説明し、交渉を行いました。
慰謝料の支払いなしで合意
当方の説明に対し、C子さんとしては最初から納得したわけではないようでしたが、弁護士に相談されたうえで、最終的には追加の支払いはないということで納得いただきました。
支払いがないという結論については、A子さんに大変喜んでいただけました。
まとめ
本件は、すでに不貞配偶者が慰謝料を支払っているという事案でしたが、不貞慰謝料について二重取りはできないという知識がなければ、A子さんは慰謝料を支払ってしまっていたかもしれません。
もちろん、不貞は良くないことではありますが、これまでもご紹介してきた通り、全て相手の言いなりになるのではなく、避けられる経済的負担もあります。
その点の検討のためにも、不貞慰謝料を請求された場合は、一度は弁護士に相談することをお勧めします。
優誠法律事務所では、離婚・不貞の初回相談は1時間無料ですので、お気軽にご連絡ください。
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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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投稿者プロフィール
2011年12月に弁護士登録後、都内大手法律事務所に勤務し、横浜支店長等を経て優誠法律事務所参画。
離婚や不倫に関するトラブルを多く担当してきましたので、皆様のお力になれるように、少しでもお役に立てるような記事を発信していきたいと思います。
■経歴
2008年3月 上智大学法学部卒業
2010年3月 上智大学法科大学院修了
2011年12月 弁護士登録、都内大手事務所勤務
2021年10月 優誠法律事務所に参画
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (共著、出版社:日本実業出版社)