弁護士に依頼することで示談金が増額した事例~肋骨骨折・慰謝料が約10倍に増額~

皆さんこんにちは。

優誠法律事務所です。

今回は、交通事故の傷害慰謝料(入通院慰謝料)について、相手方保険会社(損保会社)の提案額から大幅に増額できた事案をご紹介いたします。

【事案概要】当初の相手方損保提示額8万6000円⇒約86万円で示談

今回の事例は、肋骨骨折というお怪我の状況から通院回数が少なかったことで、相手方損保の提示額が低くかったこともあり、ご依頼後に傷害慰謝料を大幅に増額することができました。

このように後遺障害等級の認定されるような後遺障害を負わなかった事案でも、当然、交通事故によるお怪我に対して適切な補償がなされるべきです。

しかしながら、相手方損保の提案額そのままではとても適切な補償とは言い難いケースが存在します。

今回の事例は、交通事故に遭われ、治療が終了し、相手方損保から示談金額の提案を受けたものの、その提示額が適切なものかどうか分からないと困っておられる方の参考になると思いますので、ぜひご覧ください。

今回の事案の概要~相手方損保の慰謝料提示が低額~

今回の被害者Aさんは、青信号の横断歩道を歩行中、右後方からきた自動車に左折巻き込みの形で衝突され、肋骨を骨折するなどの怪我をしました。

その後、4か月ほど通院し、特に後遺症は残らず、加害者加入の相手方損保から示談金額の提案を受けました。

しかし、相手方損保の提案額に疑問があるとのことで、当事務所にご相談いただきました。

治療がひと段落して相手方損保から示談の提案がなされている事案では、通常、まず最初に後遺障害等級の申請を行うかどうかを検討します。

Aさんの場合は、幸いにも骨折した肋骨の痛みなどの症状も残存することなく、治癒して治療が終了していましたので、後遺障害等級申請は行わず、後遺障害はないという前提で示談金額の増額が見込めるかどうかの検討を行うことになりました。

後遺障害のない事案の場合、示談金の費目としては、治療費通院交通費休業損害傷害慰謝料(入通院慰謝料)等が問題になります。

このうち、治療費や通院交通費、休業損害については、治療期間中にその都度支払われていることが多いです。

特に治療費については、相手方損保が病院に直接支払うことが多く、これを「一括対応」といいます。

そのため、治療が終わった後の示談交渉の段階では、主に、残る損害費目である慰謝料の金額が問題になります。

Aさんのケースでも、治療費、通院交通費、休業損害については、治療期間中にその都度払ってもらっており、ほぼ未払いはありませんでした。

他方で、傷害慰謝料についての相手方損保の提案は8万6000円というものでした。

Aさんとしては、この金額が妥当なのか疑問に思われ、当事務所に依頼されることになりました。

交通事故の慰謝料の基準

相手方損保の慰謝料8万6000円という提案は、自賠責の基準に則ったものでした。

自賠責基準では、日額を4300円とし、「実通院日数の2倍」と「総通院期間」を比較して、少ない日数分が支給されます。

Aさんのケースでは、

・実通院日数は10日(2倍で20日)

・総通院期間は約4カ月(約120日)

でしたので、4300円×20日で、8万6000円という金額の提案になったと考えられます。

ただし、この自賠責基準は最低限の金額です。

相手方損保としては、自賠責基準で示談ができれば、任意保険としての持ち出しがなく示談できますので、自賠責基準で示談させようとするケースも珍しくはありません。

しかし、任意保険会社(相手方損保)が入っている以上、本来、自賠責基準を超える慰謝料を獲得できるはずです。

少なくとも、自賠責基準より一般的に高額とされる「任意保険基準」、さらに弁護士が介入した場合に適用される「裁判所・弁護士基準」での慰謝料の支払いがなされてしかるべきです。

交通事故の慰謝料の基準については、以下のページでも解説していますので参考にしてみてください。

3つの慰謝料基準」「低額な慰謝料基準と高額な慰謝料基準

裁判所・弁護士基準での慰謝料算定

それでは、裁判所・弁護士基準でAさんの交通事故についての慰謝料を算定するといくらになるでしょうか。

裁判所・弁護士基準はいわゆる「赤い本」に記載がありますが、以下のとおり、別表Ⅰ別表Ⅱという2つの表に基づいて算定します。

別表Ⅰ(単位:万円)

 入院1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
通院 53101145184217244266284297306314321
1月2877122162199228252274291303311318325
2月5298139177210236260281297308315322329
3月73115154188218244267287302312319326331
4月90130165196226251273292306316323328333
5月105141173204233257278296310320325330335
6月116149181211239262282300314322327332337
7月124157188217244266286304316324329334339
8月132164194222248270290306318326331336341
9月139170199226252274292308320328333338 
10月145175203230256276294310322330335  
11月150179207234258278296312324332   
12月154183211236260280298314326    

別表Ⅱ(単位:万円)

 入院1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
通院 356692116135152165176186195204211
1月195283106128145160171182190199206212
2月366997118138153166177186194201207213
3月5383109128146159172181190196202208214
4月6795119136152165176185192197203209215
5月79105127142158169180187193198204210216
6月89113133148162173182188194199205211217
7月97119139152166175183189195200206212218
8月103125143156168176184190196201207213219
9月109129147158169177185191197202208214 
10月113133149159170178186192198203209  
11月117135150160171179187193199204   
12月119136151161172180188194200    

別表Ⅰは、別表Ⅱに比べて基準が高額になっていることがわかると思います。

この2つの使い分けについては、原則的には別表Ⅰを使い、むち打ち症で他覚所見がない場合や軽い打撲や挫創の場合には別表Ⅱを用いる、と説明されています。

今回のAさんの場合、肋骨骨折があるので別表Ⅰを用いて算定します。

他方で、骨折がない場合は、別表Ⅱを用いることになるケースが多いです。

ただし、骨折がない場合でも、MRIの検査結果等他覚所見がある場合で、他覚所見が前提となる後遺障害等級が認定されているようなケースであれば別表Ⅰの適用を受けられる場合もあるので、この点は交渉が必要な部分です。

それぞれの表は横軸が入院期間、縦軸が通院期間になっています。

裁判所・弁護士基準では、基本的には実通院日数ではなく通院期間をベースに算定します。

例えば、1か月入院した後さらに4カ月通院したというケースでは、130万円の慰謝料ということになります。

Aさんの場合、入院はなく、通院が4カ月間でしたので、別表Ⅰによれば、90万円の慰謝料ということになります。

当事務所から相手方損保に対しては、このように裁判所基準に基づき、90万円の慰謝料を請求しました。

ただし、このような算定が常に認められるわけではありません。

例えば、通院が不規則かつ長期間である場合は、実通院日数の3.5倍程度を通院期間として計算することがある、と説明されています。

Aさんのケースでこれが認められてしまうと、実通院日数10日の3.5倍である35日間(1カ月強)が通院期間とされ、別表Ⅰによれば慰謝料額は30万円程度となり、かなり金額が変わってしまうことになります。

実務上の感覚としては、通院期間に対して実通院日数が少ない場合にも、このような反論が頻繁になされている印象です。

今回の相手方損保からも同様の反論がなされました。

これに対しては、確かにAさんの実通院日数は通院期間に対して少ないかもしれないが、それは肋骨骨折という症状から自宅での安静とせざるを得なかったためであるという点や、4カ月という治療期間は肋骨骨折という傷病名に対して長期間でもないし、Aさんの通院は不規則でもなかったとの再反論を行いました。

その結果、当方の再反論が認められ、90万円を基準とすることになりました。

なお、Aさんのケースとは関係ありませんが、むち打ち症などで別表Ⅱを用いる際に実通院日数が少ない場合は、実通院日数の3倍程度を通院期間として計算することもある、という説明もなされます。

この説明からは、むち打ち症の場合は、3日に1回程度はリハビリ通院したほうが慰謝料の面で不利を被らないということになります。

今回の事案では、裁判所・弁護士基準で算定された90万円を基準とすることにはなったのですが、任意保険会社は、訴訟前の段階であれば、その8割で示談してほしいと申し入れてくることが常です。

これは理屈があるという訳ではなく、裁判所・弁護士基準はあくまで裁判をした場合を前提としているため、その手間や費用をかけていない状態であれば多少の減額がされてしかるべき、という保険会社の一方的な考えからなされているものと思われます。

実際に、この部分が納得できずに、時間と費用はかかりますが交通事故紛争処理センターへの申立てや訴訟に至るケースもあります(もちろん他の争点なども考慮して増額の見込みを検討した上で行います。)。

Aさんのケースでも、当初、相手方損保から、90万円の8割である72万円で示談できないかという申入れがありました。

しかし、弁護士が裁判所基準の8割程度の金額で示談に応じることはあり得ません。

他方で、Aさんとしては裁判などにせずに早期に本件を終了させたいという意向がありました。

そのため、訴訟等ではなく交渉でできる限り高額の慰謝料を獲得する方向で話し合いを行った結果、最終的に約86万円という慰謝料額を回収することができました。

当初の相手方損保の提案からすれば約10倍に増額されているわけですから、Aさんには大変喜んでいただけました。

また、Aさんは弁護士費用特約に加入されていましたので、増額分は全てAさんにお返しすることができました。

まとめ

今回は、後遺障害等級の認定はないものの、傷害慰謝料(入通院慰謝料)を大幅に増額できた事案をご紹介しました。

治療期間中の相手方損保の対応に問題がないように思われても、治療が終わった後に相手方損保から提案される示談金額が適切なものではなく、弁護士が介入したほうが受け取れる金額が増えるケースは多くあります。

特に弁護士費用特約に加入されている場合、ほとんどのケースで弁護士が介入した方が受け取れる金額が増えると言っていいでしょう。

示談金増額の可能性がないか、相手方損保の提案をそのまま受け入れる前に弁護士にご相談されることをお勧めいたします。

優誠法律事務所では交通事故のご相談は無料で全国からお問い合わせをお受けしておりますので、お気軽にご連絡ください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

0120-570-670

関連記事もよろしければそちらもご覧ください。

弁護士に依頼することで示談金が増額した事例~右肩腱板損傷・異議申立て・後遺障害12級13号~

弁護士に依頼することで示談金が増額した事例~頚椎捻挫・後遺障害14級9号・専業主婦~

弁護士に依頼することで示談金が増額した事例~兼業主婦~

交通事故被害者のための専門サイトも開設していますので、そちらもぜひご覧ください。

3つの慰謝料基準

低額な慰謝料基準と高額な慰謝料基準

投稿者プロフィール

弁護士栗田道匡の写真
 栗田道匡 弁護士

2011年12月に弁護士登録後、都内大手法律事務所に勤務し、横浜支店長等を経て優誠法律事務所参画。
交通事故は予期できるものではなく、全く突然のものです。
突然トラブルに巻き込まれた方のお力になれるように、少しでもお役に立てるような記事を発信していきたいと思います。
■経歴
2008年3月 上智大学法学部卒業
2010年3月 上智大学法科大学院修了
2011年12月 弁護士登録、都内大手事務所勤務
2021年10月 優誠法律事務所に参画
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (共著、出版社:日本実業出版社)