「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いてしまったら・・・~トレント利用の場合も要対応~

2024年12月1日

こんにちは、優誠法律事務所です。

この記事をご覧の皆様の中には、携帯事業社やプロバイダから、突然「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いて困惑しているという方もおられるのではないでしょうか。

特に、最近ではトレント利用が権利侵害として追及されるケースが多いですが、トレント利用の場合は、利用者に権利侵害をしたという自覚がない場合がほとんどですから、突然の意見照会書に驚くのも無理はありません。

そこで、今回は、「発信者情報開示に係る意見照会書」とは何なのか、無視するとどうなるのか、どのような対応が必要なのかについて解説します。

「発信者情報開示に係る意見照会書」とは

携帯事業社やプロバイダから「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いたということは、ある人がインターネット上で権利侵害を受けたとしてその加害者を探す「発信者情報開示請求」を取っていて、あなたがその加害者であると疑われているということになります。

ここでの「権利侵害」とは、いわゆる掲示板やSNSでの誹謗中傷のほか、トレント利用が権利侵害として追及されるケースが多いです。

トレントクライアントソフトは、仕組み上、ファイルのダウンロードと同時にアップロードも行うため、著作権の保護対象となる動画等をダウンロードした際には当該動画のアップロードもしてしまうことになり、著作権侵害となってしまいます。

最近では、このような経緯で発信者情報開示請求がなされるケースが非常に多いです。

発信者情報開示請求は、まずは掲示板やInstagram等に対して「権利侵害のなされた通信についての携帯事業社やプロバイダを開示せよ」という形で始まります。

そこで携帯事業社やプロバイダが判明すれば、次に携帯事業社やプロバイダに対して、「権利侵害のなされた通信を行った契約者の情報を開示せよ」という手続きをとります。

このような請求を受けた携帯事業社やプロバイダが、該当する契約者に対して「発信者情報開示に係る意見照会書」を発送することになります。

したがって、意見照会書が発送されている時点で、ある程度手続きは進んでしまっているということになります。

意見照会書を無視すると…

意見照会書に反応しなかったとしても、携帯事業社やプロバイダが自主的に契約者の氏名住所等の情報を開示することはほとんどありません。

ただ、自主的に開示しないとしても、権利侵害が明白など発信者情報開示請求の要件を満たしている場合には、裁判所から開示せよという命令が発令されることになります。

この場合、携帯事業社やプロバイダとしては裁判所の命令に従わざるを得ないので、契約者の情報を開示することになります。

発信者情報開示請求は、権利侵害者に対して損害賠償請求等の法的責任を問うためになされます。

したがって、発信者情報開示請求者が携帯事業社やプロバイダから契約者の氏名住所等の情報を得た場合には、その後に契約者に対して損害賠償請求がなされることになります。

損害賠償請求は、内容証明や訴状が自宅に届くというところから始まることが多いです。

また、インターネット上の誹謗中傷は名誉毀損罪(刑法230条)という犯罪に該当する可能性があり、著作権侵害も犯罪となり得ます(著作権法119条)。

そのため、契約者の住所氏名がわかった場合に、それを基に刑事告訴をされるということもあります。

これらの犯罪では刑事告訴された場合でも逮捕されるケースが多いとは言えないですが、電話や訪問等の方法で警察から連絡が来ることになります。

意見照会書にどのように回答すべきか

それでは、意見照会書に対してはどのように回答すべきでしょうか。

選択肢としては、①無視②開示に同意しない③開示に同意する、の3つの方法が考えられます。

このうち①無視は、上記で記載した通り、最終的には開示されてしまう可能性があります。

次に②開示に同意しないという方法ですが、名誉毀損や著作権侵害等の権利侵害がない場合には、これが第一の選択肢になるでしょう。

ただし、こちらが開示に同意しないとしても、発信者情報開示請求の要件が認められる場合は、裁判所の命令によって開示が認められてしまうのは無視のケースと同様です。

したがって、開示に同意しない場合には、基本的には発信者情報開示の要件が認められない法的な根拠を説明する必要があります。

また、意見照会書はあくまで携帯事業社やプロバイダの契約者宛に届くため、契約者ご自身が名誉毀損や著作権侵害をしていないとしても、同居のご家族などがしている可能性はあります。

この点は確認が必要になります。

他方で、身に覚えがあるが開示されたくないのでとりあえず開示に同意しない、という方法はあまりお勧めできません。

上記のとおり、開示に同意しなくても裁判所の命令によっては開示が認められることになりますし、その場合は自宅に連絡が来てしまうことになります。そして、既に発信者への意見照会まで手続きが進んでいるということは、発信者情報開示の命令が出る可能性が相当程度あると考えられます。

また、開示に同意することで、発信者情報開示請求者から損害賠償請求訴訟を提起される前に早期に和解できることもあります。

早期に和解できれば、発信者情報開示請求者にとってもメリットがあるので、長引いた場合と比べて低額で和解できる可能性があります。

したがって、身に覚えがある場合には、発信者情報開示請求者との早期の和解を目指して③開示に同意する、という方法が適切な場合が多いです。

まとめ

今回は、携帯事業社やプロバイダから発信者情報開示に係る意見照会書が届いた場合の対応についてご説明しました。

結論としては、多くのケースで、発信者情報開示が認められない法的根拠を説明した上で開示に同意しない旨を回答するか、あるいは、早期の和解を目指して開示に同意する、という方法のいずれかを選択することになります。

開示に同意しない場合は根拠の説明に法的知識が必要になりますし、開示に同意して和解を目指す場合も相手方との和解交渉のやり取りが生じます。

そもそも、開示に同意するかしないかの選択についても、発信者情報開示に関する知識が必要になってきます。

したがって、発信者情報開示に係る意見照会書が届いた場合には、一度弁護士に相談されることをお勧めいたします。

さらに弁護士に依頼されれば、その後の発信者情報開示請求者からの連絡は基本的に弁護士に来るようになるため、ご自宅に連絡が行ってしまうような事態を回避することもできます。

優誠法律事務所では、最近特に多いトレント利用での著作権侵害の場合は、

・初回ご相談は無料
・意見照会書の回答は11万円(税込み)
・意見照会書の回答とその後の和解交渉については、着手金16万5000円、報酬16万5000円(税込み)

にてお受けしております。

(誹謗中傷、名誉毀損の場合は別途ご案内いたします。)

特に和解交渉については、ご依頼者の生活に影響が出ないように、即時に解決できるよう尽力いたします。

ぜひとも一度ご相談ください。

0120-570-670

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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投稿者プロフィール

 栗田道匡 弁護士

2011年12月に弁護士登録後、都内大手法律事務所に勤務し、横浜支店長等を経て優誠法律事務所参画。
離婚や不倫に関するトラブルを多く担当してきましたので、皆様のお力になれるように、少しでもお役に立てるような記事を発信していきたいと思います。
■経歴
2008年3月 上智大学法学部卒業
2010年3月 上智大学法科大学院修了
2011年12月 弁護士登録、都内大手事務所勤務
2021年10月 優誠法律事務所に参画
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (共著、出版社:日本実業出版社)