裁判で不貞慰謝料を獲得できた事例~夫に複数の不貞相手がいた事案~
皆さんこんにちは。
今回は不貞慰謝料について解説します。
一口に不貞慰謝料と言っても、その金額は具体的な事情によって変わってきます。
例えば、不貞時や不貞後の夫婦関係、不貞行為の内容(回数、期間、同棲や妊娠があったかなど)、不貞をした配偶者にも慰謝料を請求しているかどうか、などが考慮されます。
また、不貞の証拠を押さえるために探偵に依頼した場合には、探偵費用が考慮されることもあります。
本記事では、裁判を起こして不貞慰謝料を獲得できた事例をご紹介し、慰謝料額がどのように決まるのかを解説します。
皆さんのお役に立てますと幸いです。
ご相談内容~夫の不貞相手の女性への慰謝料請求~
A子さんから、夫のB男さんが不貞をしているので不貞相手の女性C美さんに慰謝料を請求したい、との相談を受けました。
A子さんは、弁護士への相談前に探偵に依頼し、B男さんとC美さんがホテルに入るところとホテルから出てくるところの写真を押さえていたため、不貞があったことは明らかでした。
ご相談の際、固い証拠があるので裁判になったとしても勝てる可能性が高いとお伝えしました。
A子さんは、弁護士費用を抑えるためにできれば交渉で解決したい、また、自分で対応するとC美さんから甘く見られるおそれがあるので弁護士に頼みたいとして、C美さんとの交渉を依頼されました。
交渉で不貞慰謝料300万円を請求
私たちは、速やかにC美さんに対して通知書を送り、慰謝料300万円を請求しました。
通知書には、B男さんとC美さんがホテルで不貞をしている証拠を所持していることも明記しました。
A子さんにはB男さんと離婚するつもりがなかったことなどを前提にすると、300万円という金額は相場に比べて高いのですが、まずは、A子さんの意向を尊重して請求額を決めました。
慰謝料額の相場については、これまでの経験や裁判例からすると、不貞後に夫婦が離婚に至ったとしてもせいぜい200万円程度で、特別な事情があれば多少増額されることがあるといった感じでしょうか。
C美さんからの回答は、A子さんとB男さんとの夫婦関係は既に破綻していたので不貞行為があったとはいえないが、早期解決のために30万円であれば支払う、というものでした。
A子さんは金額にはそこまで固執していませんでしたが、C美さんの回答に納得できず、C美さんの方からもそれ以上の提案はなかったため、交渉では話がまとまらず、やむなく裁判を起こすことになりました。
裁判~夫に複数の不貞相手がいた場合~
裁判では、C美さんに対して、慰謝料300万円に加えて、探偵費用と弁護士費用も請求しました。
弁護士費用は、慰謝料等の10パーセントを請求するのが通例です。
慰謝料の請求額を減らさなかったのは、C美さんの交渉での対応を不誠実と感じたA子さんの強い要望でした。
不貞の証拠としては、探偵の調査報告書に加え、B男さんとC美さんとのLINEのやり取りも提出しました。
A子さんが、B男さんのスマホから合法的に得た証拠です。なお、不貞の証拠集めについては、こちらの記事(「不倫の証拠集めで注意すべきポイントを解説!」)もご覧ください。
C美さんは、裁判でもやはり夫婦関係が破綻していたと主張してきました。
本当に夫婦関係が破綻していたのであれば、不貞行為があったとはいえず、慰謝料請求は認められません。
そこで、A子さんとB男さんが一緒に旅行した際の写真や日々のLINEのやり取りなどを証拠として提出し、夫婦関係が破綻していなかったことを説得的に主張しました。
また、不貞によってA子さんとB男さんの夫婦関係が破綻したということを、丁寧に主張しました。
これだけのお話であれば、交渉段階から大幅に増額できたと思われます。
しかし、実は、B男さんは、C美さんとは別の女性D枝さんとも不貞関係にあったのです。
そして、A子さんは、D枝さんに対しても不貞慰謝料を請求しており、こちらは交渉によって100万円が支払われていました。
対C美さんの裁判において、裁判官から、D枝さんから既に100万円を受け取っていること等の具体的な事情を踏まえると、判決になった場合には100万円はいかないと言われてしまったこともあり、結局、C美さんとは慰謝料80万円で和解が成立しました。
金額については大幅な増額とまでは言えませんが、和解の内容としてC美さんからの謝罪も得られたことや、D枝さんからの支払いも併せれば200万円近い金額を受け取れたこと、当初からリスクをきちんとお伝えしていたこと、そして何より、できることは全てやったという満足感からだと思いますが、A子さんも納得している様子でした。
まとめ
本件においてはこのように慰謝料額が決まりましたが、慰謝料の金額を決めるにあたり、考慮される要素として代表的なものは、不貞時の夫婦関係、不貞の内容(回数、期間、同棲や妊娠の有無等)、不貞後の夫婦関係などです。
また、不貞相手だけでなく配偶者にも不貞慰謝料を請求しているかどうか、ご紹介したケースのように、不貞相手が複数いる場合には他の不貞相手から慰謝料が支払われているかどうかなども考慮されます。
不貞相手(今回でいうとC美さんやD枝さん)が慰謝料を支払うと、不貞相手は、不貞をした配偶者(今回でいうとB男さん)に対してその負担分を支払うよう請求できますが(これを「求償権の行使」といいます。)、不貞された配偶者(今回でいうとA子さん)と不貞相手との間で和解をする際、不貞相手が不貞をした配偶者に対する求償権を放棄する旨の合意をする場合、不貞相手が支払うべき慰謝料額が減額されるのが一般的です。
不貞発覚後の不貞相手の態度についても、一般的には考慮要素の一つと言われていますが、私のこれまでの経験からすると、あまり重視しない裁判官が多いように感じます。
不貞の証拠を確保するために探偵に調査を依頼する方も多いですが、実際にかかった探偵費用のごくごく一部しか損害として認めない裁判官が多いです。中には探偵費用を一切認めない裁判官もいます。この点はご留意ください。
以上のように、不貞慰謝料の金額は様々な考慮要素によって決まります。
不貞慰謝料を請求する場合でも、請求された場合でも、できる限り正確な見通しを立てることが、納得のいく解決に不可欠です。
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投稿者プロフィール
約10年間の専業主婦時代を経て弁護士になり、これまで、離婚や労働を始めとする民事事件、そして、刑事事件を数多く手がけてきました。今までの経験をご紹介しつつ、併せて法的なポイントを分かり易くお伝えしていきます。
■経歴
2000年3月 早稲田大学政治経済学部経済学科卒業
2013年3月 早稲田大学大学院法務研究科修了
2015年12月 最高裁判所司法研修所(東京地方裁判所所属) 修了
2016年1月 ベリーベスト法律事務所入所
2023年2月 優誠法律事務所参画
2024年1月 企業内弁護士に転身
■獲得した判決
東京地裁判決令和2年6月10日判決(アクサ生命保険事件)(労働判例1230号71頁)