請求された不貞慰謝料を減額できた事例その1~既婚者男性との不倫~
皆様、こんにちは!
優誠法律事務所です。
今回のテーマは不貞慰謝料です。
不貞慰謝料を請求された場合の注意すべきポイントについては、以前の記事(不貞行為で慰謝料を請求された…注意すべきポイントを解説)でご説明しましたが、今回は、実際に不貞慰謝料の請求を受けた事例で、慰謝料を減額できたケースをご紹介します。
同じような状況で悩んでいる方の参考になれば幸いです。
ご相談内容
今回の依頼者A子さんは、職場の同僚であるB男さん(既婚者)と不倫してしまいました。
そのことがB男さんの奥さんに発覚してしまい、奥さんは弁護士を就けました。
その後、A子さんの自宅に、奥さんの弁護士から内容証明郵便が届き、その書面でB男さんとの即時交際中止・接触禁止や、精神的苦痛の慰謝料として300万円を支払うよう求められました。
慰謝料の支払期限は1週間以内とされており、1週間以内に支払いがない場合には、訴訟等の法的手続に移行する旨も記載されていました。
弁護士から請求されているということもあり、A子さんとしては、言われた通りに300万円を1週間以内に支払わなければならないものと思い込んでしまいました。
ただ、このような大金をすぐに準備することができなかったため、対応に困ってしまい、私たちにご相談に来られました。
ご相談時、まずは、そもそも300万円という不貞慰謝料の金額が相当であるか否かについて確認することにしました。
A子さんからB男さんとの関係について詳しくご事情を伺ったところ、
B男さんとは性交渉にまでは至っていなかったこと、
不倫の期間が短期間であったこと、
不貞行為(性交渉だけでなくその類似行為も含まれます)の回数も数回程度にとどまっていたこと
等が判明しました。
これらの点から、300万円という不貞慰謝料の金額は、あまりにも高すぎるものであるという見解を抱きました。
この見解をA子さんにご説明したところ、奥さんから請求されている不貞慰謝料に関する減額交渉のご依頼を受けることになりました。
A子さんとしては、裁判は避けたいとのご意向であったため、交渉で和解できるよう尽力する方向で進めることになりました。
減額交渉
私たちは、ご依頼後、直ちにB男さんの奥さんの弁護士に対して、A子さんから委任を受けた旨の通知(受任通知といいます)をしました。
なお、以前の記事(不貞行為で慰謝料を請求された…注意すべきポイントを解説)でも触れたとおり、慰謝料請求を無視していると相手方から裁判を起こされることがあり得るため、この通知は迅速に行いました。
その後、書面にて、大まかに以下の点を奥さんの弁護士に連絡しました。
①奥さんに対する謝罪
②請求している不貞慰謝料の金額が不相当であること
③和解による解決のご提案
①については意外に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、不適切な行為により、奥さんに不快な思いをさせてしまったことは事実ですから、この点についての謝罪はしっかり行うべきです。
このような場合、道徳的に謝罪するべきことはもちろんですが、謝罪の有無が不貞慰謝料の金額に影響することもあります。
その一方で、事実ではないことまで認めてしまわないように注意も必要ですから、安易な謝罪は禁物です。
②においては、A子さんから聞き取った不貞行為の内容・期間・回数のほか、A子さんはB男さんから積極的なアプローチを継続的に受け続けており、A子さんはB男さんに対して終始従属的であったことについても説得的に論じました。
③においては、A子さんが経済的に厳しい状況であったことも踏まえ、慰謝料として20万円を支払うという内容で提示することにしました。
これに対して、奥さんの弁護士からは、大まかに、
・ラブホテルで密会しており、性交渉にまで至っていないという言い分は状況的に不自然。
・B男さん夫妻の婚姻は長期間であること、B男さん夫妻には子供がいること等から、不倫による精神的苦痛の程度は大きく、300万円という不貞慰謝料の金額は相当。
・A子さんが経済的に厳しいとのことだが、どこかから借りてでも支払うべき。
等の回答がなされました。
奥さんの弁護士からの回答はこのような厳しいものでしたが、私たちはその後も辛抱強く、A子さんから聞き取った事情を基に奥さんの弁護士との間で減額交渉を続けました。
和解成立
結局、減額交渉の甲斐もあり、A子さんがB男さんの奥さんに対して慰謝料80万円を支払うという内容で、和解が成立することになりました。
請求されていた不貞慰謝料の金額から220万円も減額できたことに加え、A子さんのご意向通り裁判を回避することもできました。
まとめ
減額交渉は裁判ではありませんが、なぜ請求されている金額が不相当であるのかについて、法的観点から説得的に論じる必要があることに変わりありません。
それが説得的であればあるほど、請求している方としても、請求を維持することが難しいと考え、裁判ではなく交渉で和解しようとする方向に気持ちが傾くことになるためです。
また、謝罪すべき点はきちんと謝罪する等の配慮も必要となります。
これらの点を、専門家に頼らずご自身だけで対応することには大変な困難を伴います。
その上、対応を誤ってしまうと、裁判を提起され、さらに多額の請求をされてしまうリスクもあります。
そのため、不貞慰謝料を請求されてしまった場合、今回ご紹介したA子さんのように、弁護士に依頼して減額交渉することをお勧めいたします。
弁護士に依頼するかどうか悩んでいる場合であっても、少なくとも、現在請求されている不貞慰謝料の金額が相当であるかについての意見は求めるべきです。
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投稿者プロフィール
これまで一般民事事件や刑事事件を中心に、数多くの案件を担当して参りました。これらの経験を踏まえ、難しい法律問題について、時には具体例を交えながら、分かりやすい内容の記事を掲載させていただきます。
■経歴
2009年3月 明治大学法学部法律学科卒業
2011年3月 東北大学法科大学院修了
2014年1月 弁護士登録(都内上場企業・都内法律事務所にて勤務)
2018年3月 ベリーベスト法律事務所入所
2022年6月 優誠法律事務所参画
■著書・論文
LIBRA2016年6月号掲載 近時の労働判例「東京地裁平成27年6月2日判決(KPIソリューションズ事件)」