財産分与は弁護士に相談すべき?離婚時に必ず知っておきたい基本を法律事務所が解説
離婚を考えるとき、多くの方が不安に感じるテーマのひとつが「財産分与」です。
婚姻中に築いた財産をどのように分けるのか?、自分はどれくらい受け取れるのか?、あるいはどれくらい渡さなければならないのか?
財産分与については、夫婦共有財産制という法律上のルール(夫婦で協力して築いた財産を分けるルール)が定められていますが、実際には夫婦ごとに事情も価値観もまったく異なります。
実際の相談現場では、次のような悩みを抱えている方が非常に多くいらっしゃいます。
「財産分与って、実際いくらもらえるの?」
「配偶者名義の自宅や預貯金も財産分与の対象になる?」
「別居中でも財産分与の請求はできる?」
「モラハラや不倫が原因の場合でも、分与の割合は同じなの?」
こうした財産分与に関する問題は、当事者同士の話し合いだけでは解決が難しく、弁護士への相談が必要となる典型的な離婚トラブルのひとつです。
この記事では、財産分与の基本的な仕組みから、対象財産・対象外財産の考え方、法人代表者を含む場合の注意点、さらに当事務所で実際に取り扱った事例を通じて、具体的にイメージしていただけるよう丁寧に解説します。
財産分与とは
財産分与というと、「離婚の際に夫婦の財産を半分ずつ、2分の1ずつに分けること」と捉えている方が多いように思います。
確かにその理解は間違っているものではありません。
しかしながら、「夫婦の財産」とは何か、半分ずつにできないものをどう分けるか、そもそもなぜ分与するのかなど、実際にはもう少し色々なことを検討しなければなりません。
また、財産分与を単に財産を分け合う行為と捉えてはいけません。
離婚をするお二人にとって、財産分与は単なる“お金の問題”ではなく、離婚後の生活を安定させるための基盤づくりです。
離婚をした後の未来をどのように生きるのか、生きたいのかを明確にイメージしていただき、そのためにはどのように分与しあうのが良いかを考えていくのが財産分与です。
そのため、離婚後の生活のイメージが不十分であったり、財産分与の理解が不十分なまま離婚を進めてしまうと、本来思い描いていたものとは異なった生活を強いられてしまうかもしれません。
離婚する際に決めるべき事項
そもそも夫婦が離婚をする場合には、どのようなことを決めておかなければならないのかを一度整理しておきましょう。
夫婦が離婚時に整理すべき主な項目については、次のとおり大きく二つにわけて考えると整理しやすいように思います。
【夫婦関係の清算に関する事項】
・離婚届の提出方法や時期
・財産分与
・慰謝料の支払いの有無及び額
・年金分割
【子供の将来の養育等に関する事項】
・親権の帰属
・養育費の額及び支払方法等
・面会交流の具体的な条件等
中でも「財産分与」は、婚姻期間中の生活の積み重ねを清算する重要な手続きのため、十分な情報整理と専門家の助言が不可欠です。
財産分与の3つの性質(清算的・扶養的・慰謝料的)
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が協力して形成した財産を、離婚時に公平に分ける制度です(民法768条)。
大きく財産分与には次の3つの性質があると言われています。
- 清算的財産分与:婚姻中に形成された財産を清算する
- 扶養的財産分与:離婚後の生活を補う意味
- 慰謝料的財産分与:離婚原因に有責性がある場合の損害補填
今回は、まず「清算的財産分与」を中心にとらえつつ「扶養的財産分与」についても考えてみましょう。
財産分与の原則ルール
●法定財産制(別産制)
上記のとおり、財産分与は、婚姻期間中に形成した夫婦の財産を離婚時に分ける、という制度です。
この点、「夫婦の財産」については、民法で以下のように定められています。
・第755条 (夫婦の財産関係)
夫婦が、婚姻の届出前に、その財産について別段の契約をしなかったときは、その財産関係は、次款に定めるところによる。
・第758条(夫婦の財産関係の変更の制限等)
1項 夫婦の財産関係は、婚姻の届出後は、変更することができない。
・第762条(夫婦間における財産の帰属)
1項 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする。
2項 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。
「婚姻中自己の名で得た財産」ということになりますと、例えば自分が働いて得た給与なども特有財産になるのではないかと考えられるかもしれません。
しかしながら、給与によって得た財産については原則として夫婦の生活費として共有財産となると考えています(家の家事と労働による給与の取得が一体となっており、夫婦が協力して得た財産であると考えられるためです)。
したがって、いわゆる専業主婦の方であっても、夫婦の共有財産を有していると考えられる場合が多く、夫に対して財産分与を求められないということはありません。
●財産の基準時
財産分与の対象となる財産を判断する基準時は、別居時または離婚時のどちらか早い時期とされています。
別居後は夫婦の生活共同関係が実質的に失われるため、別居後に増えた財産は原則として分与の対象にならないと考えられています。
●分割割合
原則として、夫婦が2分の1ずつ取得するのが公平であると考えられています。
財産分与の対象財産
財産分与の対象となるのは、婚姻期間中に形成された夫婦の「共有的財産」です。
具体的には以下のようなものが該当する可能性があります。
- 預貯金・現金
- 自宅等の不動産
- 株式・投資信託の有価証券
- 退職金(一定条件で対象)
- 生命保険の解約返戻金
- 自動車・貴金属等の高価な動産
そのため、離婚を考えている場合には、自分と配偶者の双方について、上記財産を整理していく必要があります。
一方、次のような財産は財産分与の対象にならないと考えられています。
- 結婚前から保有していた預金
- 婚姻期間中に相続した財産
- 婚姻中に受けた個人的な贈与
モラハラ・DV・不倫がある場合の財産分与はどうなる?
離婚に至る原因が、配偶者からのモラハラやDV、不倫であった場合、
「財産分与の割合は有利になるのではないか」
「相手から十分な金額をもらえるのではないか」
と考える方も少なくありません。
しかし、財産分与と慰謝料は法律上、原則として別のものとして扱われます。
モラハラ・DV・不倫と財産分与の基本的な関係
財産分与は、婚姻期間中に夫婦が協力して築いた財産を清算する制度であり、原則として、離婚原因がどちらにあるかにかかわらず、2分の1ずつ分けるのが一般的とされています。
そのため、不倫やモラハラ、DVがあったからといって、直ちに財産分与の割合が大きく変わるわけではありません。
慰謝料との関係|混同しやすいポイント
一方で、不倫やDV、モラハラが原因で離婚に至った場合には、財産分与とは別に、慰謝料を請求できる可能性があります。
この慰謝料は、精神的苦痛に対する損害賠償であり、財産分与とは目的や性質が異なります。
実務上は、
「財産分与は原則どおり2分の1」
「不倫やDVについては慰謝料で調整する」
という形で整理されるケースが多く見られます。
弁護士が交渉に入るメリット
もっとも、モラハラやDV、不倫がある事案では、当事者同士で冷静な話し合いを行うことが難しいケースが少なくありません。
「相手が話し合いに応じない」「財産の内容や金額を開示しない」「精神的な圧力をかけてくる」といった事情がある場合、弁護士が代理人として交渉することで、適正な財産分与や慰謝料の解決が可能になることがあります。
特に、調停や裁判を見据えた交渉が必要な場合には、早い段階で弁護士に相談することが、結果的に有利な解決につながります。
財産分与は弁護士に依頼すべき?費用・無料相談の考え方
財産分与について調べている方の多くが、
「弁護士に相談すべきかどうか」
「費用がどれくらいかかるのか」
といった点で迷われています。
結論から言えば、
・財産の金額が大きい場合
・不動産・退職金・株式などが関係する場合
・配偶者との話し合いが難航している場合
には早い段階で弁護士に相談するメリットは非常に大きいといえます。
弁護士に依頼すべきタイミング
特に、次のような状況に当てはまる場合は、弁護士への依頼を検討すべき時期といえます。
・相手が財産の内容や金額を開示しない
・自宅や預貯金、退職金などの分け方で揉めている
・別居中で、今後の交渉の進め方がわからない
・調停や裁判に進む可能性がある
これらのケースでは、当事者同士での解決が難しく、弁護士が代理人として交渉に入ることで、適正な財産分与の実現につながることが多くあります。
弁護士費用はどのくらいかかる?無料相談の活用
弁護士への相談をためらう理由として、弁護士費用への不安を挙げる方も少なくありません。
もっとも、多くの法律事務所では、初回の無料相談を実施しており、2回目以降の継続相談を受けている事務所も増えています。
初回無料相談では、
・財産分与の対象となる財産
・おおよその分与割合や金額
・今後の手続きや流れ
などについて、具体的な見通しを知ることが可能です。
費用が発生する前に状況を整理できる点は、弁護士相談の大きなメリットといえるでしょう。
「強い弁護士」「実績」のある事務所を選ぶ重要性
財産分与は、法律の知識だけでなく、交渉力や実務経験が結果に大きく影響する分野です。
特に、
不動産や住宅ローンが絡むケース
高額な預貯金や退職金があるケース
不倫やDVなど感情的対立が激しいケース
では、離婚案件の実績が豊富な弁護士に依頼することで、より有利な解決が期待できます。
実績のある弁護士であれば、調停や裁判を見据えた現実的な戦略を立てながら、依頼者の不安を軽減しつつ解決へ導くことが可能です。
法人代表者の財産分与について
夫婦の一方が会社の代表者である場合、財産分与の中でも重要なポイントとなるのが「法人財産」や「株式」をどう扱うかという点です。
この点、まず法人(株式会社など)は夫婦とは独立した人格を持つため、会社名義の不動産や預金、設備等は原則として「夫婦の共有財産」にあたりませんから財産分与の対象にはなりません。
ただし、例えば社員及び株主が代表者のみであり、会社の資金と私的な資金が混在しているような場合には、その部分について個人財産とみなして分与対象に含める余地が全くないわけではありません。
仮に会社の財産が対象外であると考えざるを得ない場合でも、会社の株式(代表者が個人で所有している部分)は個人財産であるため、原則として夫婦の共有財産として財産分与の対象になりえます。
ただ、株式自体が財産分与の対象となる場合でも株式そのものを妻(または夫)に渡してしまうと、経営権や会社運営に影響が出るため、多くの場合には株式現物を分与するのではなく「株式価値に相当する金額」を支払うことになります。
その場合の株式の価値をどのように考えるかについては、専門的な評価が必要となりますので、弁護士等の専門家に相談するのが良いでしょう。
離婚時に財産分与を定めた具体例
【事例①】共働き夫婦(30代・子なし)
——自宅売却益の分与と“頭金300万円”を特有財産として控除したケース——
依頼者である妻(30代)は、共働きの夫との離婚を検討されていました。
夫婦はそれぞれ給与口座を持ち、生活費は主に夫名義の口座から支出されていました。
夫には積立型の生命保険があり、自宅は夫名義でした。そして夫婦の間に子どもはいませんでした。
妻は、「長年共働きで家計を支えてきたのに、自宅も預金も夫名義が多い。公平に財産分与されるのか不安だ」という思いを抱き、当事務所に相談・依頼されました。
当事務所で財産の全体を整理し、夫と連絡を取り合いました。
その過程で、預貯金については夫婦の管理する残高を確認しあい、最終的には預金は差分を半分ずつ分けることとし、また自宅は売却してその売却益を半分ずつ分けることで合意することになりました。
また、自宅購入時の頭金300万円は妻の実家が拠出した特有財産として扱われる旨を主張し、その分を取り戻すことができました。
【事例②】専業主婦の妻(40代)と小学生の娘
——「娘が22歳まで無償で自宅に住める」取り決めをした柔軟な解決例——
こちらは専業主婦の妻(40代)からの相談です。
夫は会社員で、自宅は夫名義。生活口座や夫の生命保険もありました。
夫婦には小学生の娘が一人いました。
妻は「離婚すると住む場所や生活が不安。娘の環境は変えたくない」と強く希望していました。
特に専業主婦で収入がありませんでしたから、引っ越すこともできず(審査に通らない可能性が高い)悩んでいました。
そうした依頼者様の不安を汲み取りつつ、担当弁護士が夫に離婚条件を交渉していきました。
その結果、自宅不動産については売却等による分与をするのではなく、「娘が大学を卒業する22歳までは、夫が住宅ローンを払い続け、妻と娘は無償で自宅に住み続けられる」ということで合意に至りました。
この点は、清算的な財産分与というより扶養的な財産分与の性質が色濃く出た例かと思います。
なお、娘が22歳になった後は、再度協議のうえ住居をどうするか調整することとされました。
依頼者様にとって離婚後も娘の住環境を変えずにいてあげたいという希望や今後の生活に対する不安が払しょくされ、離婚後の思い描いていた生活を確保することができました。
まとめ
財産分与には法律上の基本ルールがありますが、夫婦の生活スタイル、価値観、子どもの有無、財産の種類、離婚に至る経緯などによって、最適な解決方法は大きく異なります。
本記事で紹介したように、
- 自宅を売却して利益を半分に分けるケース
- 特有財産を考慮して調整するケース
- 子どもの生活を最優先に、自宅使用を柔軟に取り決めるケース
など、夫婦ごとの事情に応じた最適解が存在します。
離婚はゴールではなく、新しい生活のスタートです。
だからこそ、「離婚後の未来の生活をどのようにデザインしたいか」をまず考え、その希望を実現するために適切な方法を一緒に探してくれるサポーターが必要です。
当事務所の弁護士は、依頼者の方の想いや人生設計に丁寧に寄り添い、可能な限り「離婚後の夫婦・家族の未来」がよりよいものになるように、最適な話し合いと解決に向けたサポートをいたします。
当事務所では、財産分与の整理、調整、交渉、調停まで一貫してサポートしています。
離婚を検討されている方、財産の扱いに不安を抱えている方は、どうぞお気軽にご相談ください。
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投稿者プロフィール

これまで、離婚・相続・労働・交通事故などの民事事件を数多く手がけてきました。今までの経験をご紹介しつつ、皆様がお困りになることが多い法律問題について、少しでも分かりやすくお伝えしていきます。
■経歴
2009年03月 法政大学法学部法律学科 卒業
2011年03月 中央大学法科大学院 修了
2011年09月 司法試験合格
2012年12月 最高裁判所司法研修所(千葉地方裁判所所属) 修了
2012年12月 ベリーベスト法律事務所 入所
2020年06月 独立して都内に事務所を開設
2021年03月31日 優誠法律事務所を開設
2025年04月 他事務所への出向を経て優誠法律事務所に復帰
■著書
こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)








