会社から解雇を言い渡されたときに、やってはいけないNG行動とは?
こんにちは、優誠法律事務所です。
今回は、離婚後の会社から解雇を言い渡されてしまったときのNG行動について解説したいと思います。
突然会社から解雇を言い渡されてしまった場合、冷静でいられる方は多くないのではないでしょうか。
解雇について納得できないという気持ちを抱く方もいらっしゃると思います。
解雇は、客観的に合理的な解雇理由がない場合(解雇権の濫用)には、無効です。
そのため、解雇に納得できないときには、会社に対して「解雇無効」(不当解雇)を主張することを検討しましょう。
もっとも、やってしまうと解雇を争えなくなる(争うことが非常に困難となる)NG行動があります。
そこで、この記事では、会社に対して解雇無効を主張する手順・方法や解雇を争う場合のNG行動について、弁護士の立場から解説します。
解雇の法的根拠や種類について
解雇とは?
解雇とは、使用者が被用者に対し、被用者との雇用契約を一方的に解除することを言います。
被用者が労務を提供し、使用者がこれに対して賃金を支払うことを約束すると、使用者と被用者との間で雇用契約が成立します(民法623条)。
そして、この雇用契約を終了させるには、被用者から辞職する、被用者と使用者とで合意退職する、使用者が解雇するという方法が考えられます。
被用者から一方的に辞職することができるように、使用者も一方的に雇用契約を解除することができるのです。
もっとも、雇用契約によって給与を受領し、これを生活の基盤としている方が多い中、どのような時も使用者が一方的に雇用契約を解除することができるとすると、被用者の生活が脅かされ、本来対等な契約当事者のバランスが崩れる可能性があります。
そこで、労働契約法は、解雇につき、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定め、解雇を制限しています(同法第16条)。
解雇の種類
解雇には、一般的に、「普通解雇」と「懲戒解雇」があります。また、普通解雇の特殊な類型として、整理解雇があります。
普通解雇とは、雇用契約上認められる解雇権をその根拠としています。
そのため、就業規則や雇用契約において解雇の定めがない場合であっても、直ちに無効ということにはなりません。
普通解雇の解雇事由には、例えば、能力不足を理由とするものや体調不良等によって業務に耐えられない状態となった場合などがあります。
整理解雇も普通解雇と同様に、雇用契約上認められる解雇権をその根拠としています。
もっとも、普通解雇が一般的には被用者に原因がある場合が多いのに対し、整理解雇は会社の都合によってなされるものです。
たとえば、会社の業績不振等を原因として、事業を縮小したり、会社を倒産させる場合の解雇などがこの整理解雇にあたります。
懲戒解雇は、その根拠を当然に雇用契約に求めることができません。
これは、雇用契約が使用者と被用者との対等な立場における契約であるため、一方当事者が懲罰権の行使として行う懲戒解雇は、その根拠がなければ当然には行うことができないと考えられているためです。
そのため、懲戒解雇を有効に行うためには、雇用契約書や就業規則等に根拠がなければならないとされています。
解雇が無効となる場合
普通解雇
普通解雇は、上記の労働期契約法第16条の「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」のルールに服することとになります。
そのため、客観的に合理的な理由がない場合や、社会通念上相当でないという場合には使用者は有効に解雇をすることができません。
この「客観的合理的理由」とは、通常は会社が定める普通解雇事由の該当性をいい、「社会通念上相当」かどうかは、解雇事由に該当するとしても、その軽重や従業員側の事情等を考慮したときに、「解雇」という手段が相当か(バランスがとれているのか)という基準で判断されます。
整理解雇
整理解雇は、普通解雇の特殊な例ですが、会社の都合による解雇であるため、上記の一般的なルールの他、以下の4要件を満たさない場合には無効であると考えられています。
① 整理解雇の必要性があるかどうか
② 使用者が解雇を回避する努力をしたかどうか
③ 解雇者の人選基準や人選に合理性があるかどうか
④ 解雇手続きに妥当性があるかどうか
懲戒解雇
懲戒解雇は、上記とおり、まずはその根拠となる雇用契約書ないし就業規則の定めがあることが要件となっています。
また、懲戒については、労働契約法第15条で、「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」と定められており、やはり、客観的に合理的な理由がない場合や、社会通念上相当でないという場合には使用者は有効に解雇をすることができません。
解雇を争う場合の手順
解雇理由証明書の交付を求める
上記のとおり、解雇を行うには、それ相応の理由が必要です。
この点、使用者は、被用者から、解雇の理由について証明書を請求した場合においては、遅滞なくこれを交付しなければなりません(労働基準法第22条1項)。
この証明書を、「解雇理由証明書」などと呼びます。
解雇が有効か無効かを考えるに当たって、まずは使用者が認識している解雇理由を確認するため、解雇理由証明書の交付を請求しましょう。
解雇理由を確認する
解雇理由証明書が交付されたときには、当該理由での解雇が、客観的に合理的な理由がない場合や、社会通念上相当でないという場合に該当するかどうかを検討しましょう。
これらの場合に当たる場合には、解雇は無効です(労働契約法第15条、同法第16条)。
解雇が無効である旨を会社に主張する
⑴ 交渉
解雇を争うためには、まずは、解雇が無効(不当解雇)であることを会社に伝え、解雇を撤回するよう求めましょう。
口頭での交渉という手段もないわけではありませんが、「言った言わない」という争いになることを避けるため、内容証明郵便を送付する方法等でこれを行うことをお勧めします。
⑵ 労働審判
交渉で会社が解雇の無効を認めない場合、あるいは円満退職の合意ができない場合には、法的手続きを採ることを検討しましょう。
法的手続きには、労働審判と労働裁判(民事裁判)が一般的な手段として考えられます。
労働審判手続きは、原則として3回以内の審理で終結するため、早期の解決を図ることができる可能性があります。
もっとも、あくまで話し合いでの解決を目指す手続であることや3回しか審理がなされないことから、使用者の態度が非常に強硬な場合や、事案が複雑である場合などには労働審判での解決を図ることは困難だと言えるでしょう。
⑶ 労働裁判(民事裁判)
労働裁判(民事裁判)で解雇を争うということも当然可能です。
基本的には、解雇が無効であること、すなわち従業員たる地位がまだ存在することを確認するよう求め、併せて会社側が解雇した(と主張している)日以降の給与の支払いを求めます。
解雇を争う場合のNG行動
上記のとおり、使用者が「解雇する」という場合であっても、その解雇が無効であると主張し、これを争うことが可能な場合があります。
もっとも、解雇を争う場合に、やってしまいがちなNG行動がありますので、注意が必要です。
退職届(退職願い)を提出する
使用者から、「解雇だ」といわれる一方で、退職届を提出するよう、あるいは自己都合により退職することが記載された書面にサインを求められることがあります。
退職届を出してしまうと、そもそも自主退職だと主張されて使用者が「解雇をした」という事実自体が争われる可能性があります。
その場合には、解雇の意思表示がなされたことを前提とした解雇無効の主張ができなくなってしまう可能性が高いため、少しでも解雇に納得できない時には退職届を提出したり、会社が用意した書面にサインをすることは控えましょう。
退職金の支払いを請求する
退職金を請求することは、解雇が有効(退職した)であることを前提とした行動です。
解雇を争う場合には、「解雇が無効=まだ従業員たる地位が存在する」と主張することになるわけですので、退職金の支払い請求とは矛盾した主張になってしまいます。
退職金を請求したら直ちに解雇を争うことができなくなるわけではありませんが、少しでも解雇に納得できない時には、退職金の支払いを請求することは控えましょう。
解雇予告手当金の支払いを請求する
労働基準法第20条1項は、「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。」と定めています。
この予告に替わる30日分以上の平均賃金を解雇予告手当といいます。
そのため、例えば即日解雇を言い渡された場合には、この解雇予告手当の支払いを求めることができます(例外的に解雇予告手当を支払わなくても良いケースもあります)。
もっとも、この解雇予告手当の支払いを求めることは、解雇が有効であることを前提とした行動です。
解雇を争う場合には、「解雇が無効=まだ従業員たる地位が存在する」と主張することになるわけですので、解雇予告手当の支払い請求とは矛盾した主張になってしまいます。
この解雇予告手当の請求についても、請求したら直ちに解雇を争うことができなくなるわけではありませんが、少しでも解雇に納得できない時には、解雇予告手当の支払いを請求することは控えましょう。
よくあるNG行動についてのご質問
離職票の交付を求めること
Q:離職票を求めることはNG行動にあたるでしょうか?
A:離職票を求めることも退職を前提とした行動のようにみえるため、避けるべきとも思えます。
もっとも、失業給付については、解雇を争っている状態でも「仮払い」という形で受給することが可能です。そのため離職票を求め、失業給付を受給することは、解雇を争う上で特段NG行動ということではありません。
転職
Q:解雇を争う場合には、転職をすることはNG行動にあたるでしょうか?
A:「解雇が無効=まだ従業員たる地位が存在する」と主張することになるわけですので、転職したことが解雇無効の主張の中で問題となる可能性は否定できません。もっとも、使用者に解雇されれば当然給与が出なくなり、生活の基盤が失われることになりますので、やむを得ず転職をして、当面の生活費を得る必要がある場合もあるでしょう。
慎重になるべきではありますが、転職をしたら直ちに解雇を争うことができなくなるわけではありませんので、迷ったときには、弁護士等の専門家にアドバイスを求めましょう。
弁護士に依頼することのメリット
解雇を争うためには、法的な知見が必要不可欠です。
また、被用者が、使用者と直接やりとりをすることは、大きな負担がかかることでしょう。
弁護士は、法律の専門家ですので、弁護士に依頼をすることで的確なアドバイスを得ることができるでしょう。
そして、弁護士に依頼をすることで、交渉やその後の法的手続を任せることができますので、精神的な負担も大きく軽減させることができるでしょう。
ただ、弁護士にも得意・不得意な分野がありますので、特に労働問題に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。
まとめ
今回は、解雇を争う方法・手順と解雇を言い渡されたときのNG行動について説明しました。
突然使用者から解雇を言い渡された場合でも、その解雇を争うことができる可能性があります。
解雇を言い渡された場合、なかなか冷静ではいられないと思いますが、今後解雇を争う場合には控えるべきNG行動が存在します。
個別にどのような行動がOKで、どのような行動がNGであるのかを個人で判断することは難しいのではないでしょうか。
解雇に少しでも納得できない時には、まずはお早めに専門家である弁護士に相談することをお勧めします。
弁護士法人優誠法律事務所では、労働問題の経験豊富な弁護士が複数在席しています。
また、解雇については、初回無料でご相談していただくことができる場合があります。
まずはお気軽にご相談ください。

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投稿者プロフィール

2011年12月に弁護士登録後、都内大手法律事務所に勤務し、横浜支店長等を経て優誠法律事務所参画。
離婚や労働問題に関するトラブルを多く担当してきましたので、皆様のお力になれるように、少しでもお役に立てるような記事を発信していきたいと思います。
■経歴
2008年3月 上智大学法学部卒業
2010年3月 上智大学法科大学院修了
2011年12月 弁護士登録、都内大手事務所勤務
2021年10月 優誠法律事務所に参画
■著書
交通事故に遭ったら読む本 (共著、出版社:日本実業出版社)