ビットトレント利用でアダルトビデオ制作会社から発信者情報開示請求を受けた事例について、示談で解決した事例

皆様、こんにちは。

優誠法律事務所です。

今回のテーマはビットトレント利用の「発信者情報開示請求」についてです。

当ブログの以前の記事で、インターネット利用に関して発信者情報開示請求を受けてしまった場合の対処方法などについてご説明しましたが、これらの記事をご覧になった方々から当事務所に多くの相談が寄せられています。

特に、最近、アダルトビデオの制作会社から依頼を受けている弁護士が、多数のビットトレント利用者に対して発信者情報開示請求を行っているようで、ご自身の契約するプロバイダーから「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いたというご相談も増えています。

そこで、今回は、実際にトレント利用で発信者情報開示請求を受けた方からのご依頼を受け、制作会社と示談した事例についてご紹介します。

同様のことでお困りの方は、ご参考にしていただけますと幸いです。

【参考記事】

アダルトビデオなどのトレント利用で意見照会書が届いたら・・・

「発信者情報開示に係る意見照会書」が届いてしまったら・・・~トレント利用の場合も要対応~ | 優誠法律事務所ブログ (yuseilaw.jp)

今回の事案の内容~数ヶ月前のトレント利用に対する開示請求~

今回の依頼者、長野県在住のZさんは、たまたまご自宅にいらっしゃった時にソフトバンクから郵便物が届いたので、開封したところ「発信者情報開示に係る意見照会書」が入っていました。

ソフトバンクは、Zさんがご自宅のインターネットの契約をしている会社で(「アクセスプロバイダー」といいます)、普段からZさん自身もご自宅でインターネットを利用していました。

ソフトバンク(厳密に言うとソフトバンクが依頼している代理人弁護士)からの意見照会書によると、C社というアダルトビデオの制作会社が、あるAV作品についてビットトレントを利用した人たちのIPアドレスの情報を取得し、各IPアドレスについて発信者情報開示請求を東京地方裁判所に申し立てているとのことでした。

そして、ソフトバンク側で確認したところ、そのうちの一つのIPアドレスがZさんのものだったとのことで、Zさんに個人情報を開示することに対する意見を求める内容でした。

制作会社側の発信者情報開示請求申立書には、100以上のIPアドレスが記載されており、ソフトバンクに対して、同時に多数のトレント利用者の個人情報を開示させようとする内容でした。

Zさんは、普段から時々ビットトレントを利用してアダルトビデオをダウンロードしていましたが、発信者情報の開示請求をされた該当のAV作品には見覚えがありませんでした。

ただ、Zさんは、トレントでダウンロードしたアダルトビデオを見た後は、毎回すぐにデータを消去していたため、本当にご自身が該当の作品をダウンロードしたかどうかを確認することができませんでした。

そのため、Zさんとしては、少なくとも該当の作品をご自身がダウンロードしていないと自信を持って言える状態ではなく、Zさんの同居のご家族は奥さんと小学生の娘さんだけでしたので、ご自身がダウンロードしたことを認めざるを得ないと考えました。

ただ、Zさんとしては、トレント利用のことを家族に知られることだけは避けたいと思い、慌ててインターネットでトレント問題を調べたところ、当事務所のブログにたどり着き、ご相談のご連絡をいただきました。

ご相談をお受けしたところ、Zさんのご希望は、制作会社側と早期に示談をすること、最後までご家族に秘密で処理することの2つで、示談金をすぐに用意することも可能とのことでしたので、極力ご希望に沿えるように尽力する旨をお伝えし、ご依頼に至りました。

プロバイダーからの「発信者情報開示に係る意見照会書」に対する対応方法

ソフトバンクの代理人弁護士からの意見照会書では、2週間以内に発信者情報の開示に同意するか不同意かを回答するよう指示されていました(どこのプロバイダーも同じような形で意見照会をしてきます。)。

そこで、まず、私たちは、Zさんの代理人としてソフトバンクへ開示に同意する内容の回答書を送りました。

これは、発信者がアクセスプロバイダーに不同意の意見を出しても、有効な反論がなければ、裁判所が開示命令を出してしまい、個人情報が開示されてしまう可能性が高く、本件のように争う要素がない事案では不同意意見を出しても意味がないと考えられるためです。

特に、Zさんの場合は、家族にバレる前に早期に解決したいというご希望でしたので、不同意意見を出す必要はありませんでした。

もちろん、(ビットトレント問題に限らず)発信者情報開示を争う場合には、意見照会書に開示に同意しないとの回答を記載し、その理由についても記載します。

発信者が不同意の場合も、あくまで発信者情報開示請求の手続きの当事者はアクセスプロバイダー(Zさんの事例ではソフトバンク)ですので、裁判所でどのように主張するかはプロバイダー側で判断して対応しますが、基本的には、開示を拒否した上で、発信者からの意見照会書を証拠として提出して意見書に沿う形で反論してくれることが多いです。

ですから、不同意意見を出す場合には、その理由についてもしっかり記載する必要があります。

発信者が任意の情報開示に不同意の場合は、最終的には双方の主張が出たところで、裁判所が開示命令を出すかどうかの判断をします。

そのため、不同意意見を出しても、裁判所の判断で開示命令が出てしまうと、プロバイダー側がそれに従って発信者情報を開示してしまいます。

そして、その場合には、発信者の情報を得た開示請求者側(ビットトレントの場合は制作会社)から損害賠償などの請求を受けることになります。

制作会社代理人弁護士と示談交渉で和解成立~作品個別の和解か包括和解か~

今回のZさんの場合、ソフトバンク側に発信者情報の開示に同意する意見書を送りましたので、その後にソフトバンク側が制作会社側にZさんの情報を開示して、制作会社側から連絡があることが想定されました。

しかし、Zさんとしては、早期解決という点に強い希望があり、ご家族に秘密にしたいというご希望もありましたので、私たちは先回りして制作会社側の代理人弁護士にも受任通知を送り、当事務所が窓口になることを伝えました。

これによって、ソフトバンク側からの連絡も、制作会社側からの連絡も全て当事務所に来ることになり、Zさんのご自宅にトレント関係の書類が届いたり、Zさんのご自宅に電話が入る可能性を無くすことできます。

その後、制作会社側からは、当事務所にビットトレントの利用が著作権侵害行為に該当し、刑事罰の対象となる違法性の高い行為であると主張で、刑事告発することをにおわせつつ、示談金を支払うのであれば示談に応じる旨の通知が届きました。

また、示談の方法については、今回発信者開示請求を受けたAV作品の1作品のみについて示談をする方法と、C社の作品全てについて包括示談する方法の2つが提示されていました。

仮に、今回の該当作品のみで示談をする場合、後になって同じ制作会社から別の作品で発信者情報開示請求を受けたときには、再度その別の作品について示談をする必要があり、その都度示談金が必要になりますが、包括示談する場合には、それ以降に別の作品のトレント利用が発覚しても、再度の示談をする必要はないということです。

ただし、包括示談をしたとしても、示談日以降に新たにトレント利用をした場合には、示談の対象外になります。

なお、包括示談については、1作品での示談と比べて2倍強の示談金が提示されていました。

ビットトレント事案の場合、これまで当事務所が取り扱った事案では、各制作会社が全て同じ法律事務所に依頼していましたので、だいたい毎回同じような通知を受けています。

同じ制作会社の複数の作品についてトレント利用をした心当たりがある場合は、包括示談をしてしまった方が良いということになります。

Zさんとしては、もともとビットトレントを頻繁に利用していた訳ではなく、発信者情報開示請求を受けた作品のダウンロード時期の少し後からは、ビットトレント自体を利用していないとのご記憶だったこと、C社の作品については他には見ていない可能性が高いとお考えであったことなどから、1作品のみでの示談をご希望されました。

その後、私たちはZさんのご希望を受けて、制作会社側の代理人弁護士と示談をまとめました。

示談成立後、Zさんは速やかに示談金の支払いを済ませ、ご希望通りにご家族に秘密のまま解決することができました。

今回は、最初のご相談から制作会社との示談書の締結まで10日ほどのスピード解決となりました。

まとめ

今回は、ビットトレントを利用したことにより、アダルトビデオの制作会社から発信者情報開示請求を受けた方からのご依頼を受け、制作会社側と示談を成立させた事例をご紹介しました。

今回の依頼者のZさんのように、トレント問題はご家族には相談しにくい、秘密で処理したいという方も多いと思いますが、ご紹介したように、弁護士に依頼すればご自宅に連絡が行くことはなくなります。

一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

当事務所では、ビットトレントの問題は全国からご相談をお受けしております。

0120-570-670

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最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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投稿者プロフィール

 栗田道匡 弁護士

2011年12月に弁護士登録後、都内大手法律事務所に勤務し、横浜支店長等を経て優誠法律事務所参画。
離婚や不倫に関するトラブルを多く担当してきましたので、皆様のお力になれるように、少しでもお役に立てるような記事を発信していきたいと思います。
■経歴
2008年3月 上智大学法学部卒業
2010年3月 上智大学法科大学院修了
2011年12月 弁護士登録、ベリーベスト法律事務所勤務
2021年10月 優誠法律事務所に参画
■著書
交通事故に遭ったら読む本(共著、出版社:日本実業出版社)